農山漁村に泊まる「農泊」強化、2025年度までに700万人泊へ、農水省がプラットフォーム構築や、インバウンド拡大を推進
消費者動向調査、カギは若者層へのアプローチ
農泊推進研究会では、「農泊旅行に関する消費者動向調査」の結果も報告。それよると、広義の農泊市場における2022年度の旅行消費額は約1.2兆円(国内旅行全体の6%程度)、延べ旅行者数は約3000万人(国内旅行全体の7%程度)と推計。コロナ自粛が明けつつあった2022年度の国内旅行者数は前年比56%増だった一方、農泊旅行者も同52%増となった。 農泊の認知度は、前年の19%から24%に上昇したものの、意向率は前年比5ポイント減の20%となった。特に20代は男女平均で、認知率13%に対して、意向率が24%と大きく差があることから、この層へのアプローチがカギになると位置付けた。また、男女別では、男性の方が意向率はが高い傾向だった。 農泊の動機トップ3は、「農山漁村の自然を満喫するため」「リフレッシュするため」「地域の美味しい食事」となった。一般的な国内旅行と比較すると「東北」「1人旅」「民宿・民泊」が多いのが特長。「東北」への旅行は、一般的な国内旅行(5%)よりも高い18%、「1人旅」は18ポイント高い36%、「民宿」は23ポイント高い37%となった。 全体の満足度は前年の45%から53%に上昇しているものの、料金が期待値・満足度ともに低下。体験では「価格に見合った体験ではなかった」が33%にものぼった。
農泊先進国イタリア、税制優遇で経営の維持が可能に
ノンフィクション作家の島村菜津氏は、イタリアで農泊にあたる「アグリトゥリズモ」の視察を報告した。イタリア各地のアグリトゥリズモ地域を巡った島村氏は「20年前に行ったときは、空き家だらけだったところが、ガイドブックに掲載されるお店ができた地域もある」と明かし、新たな担い手による農業の再興と地域おこしが成功している地域を紹介した。 また、アグリトゥリズモに対する税制優遇措置も説明。農山地の建物に対して、それを住居とする場合、固定資産税を免除。多くの山間部や丘陵地では農地でも固定資産税が免除されるなど、アグリトゥリズモが維持されやすい税制環境が整えられている。さらに、在来種を育てる場合には、EUから助成金も拠出されるという。 島村氏は新たなアグリトゥリズモとして「教育ファーム」についても言及。「教育ファームは、農業から遠ざかってしまった子供たちに基本的なことを教えて、生きる力をつけようという取り組み。それに加えて、ある程度ゆとりのある大人たちに向けて、本当に美味しいものの、環境保全型の農業とは何かを伝えている。イタリアではその意義がしっかりと位置付けられている」と話した。 このほか、地震の被災地で生まれた分散型ホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」と農泊、そして空き家対策との親和性についても触れた。
トラベルボイス編集部