なでしこJに求められる世代交代
指揮官は特に、昨年のU-17女子W杯で優勝した“リトルなでしこ”を含む現在のU―19世代を、「魅力的でインターナショナルな選手もいる」と高く評価している。昨年のU-17女子W杯では、大会MVPとなるゴールデンボールにMF杉田妃和(ひな=INAC神戸)が選ばれた。また、GK松本真未子(浦和レッズレディースユース)が大会最優秀GK賞にあたるゴールデングローブ、MF長谷川唯(日テレベレーザ)がMVPランク2番目のシルバーボールを受賞した。 「戦術のすり合わせや、チームに溶け込ませるのは時間がかかると思い、あえてW杯には選考しなかった」と不選出の理由を詳細に説明をしたことからも、若い彼女たちのポテンシャルを買っていることが窺える。 もちろん、有望株がいるのは“リトル世代”だけではない。“ヤング時代”に能力を見せながら、その後は臥薪嘗胆の思いを抱く時期も長かったMF猶本光(浦和レッズレディース)、MF田中陽子(2部・ノジマステラ)らの再浮上にも期待できる。 幸運なのは、世代交代を促す絶好の機会となる大会が目の前にあることだ。8月1日から9日まで中国・武漢で行われる東アジア杯だ。 同大会はインターナショナルマッチデーの開催ではないため、基本的には国内組だけでメンバーを構成することになり、若手には大きなチャンス。日本サッカー協会としても、例えばメンバーを23歳以下に限定するなど思い切った方策を打って出ても良いだろう。 世代交代が結果として良い方向に出なければいけないのは、来年2月に開催される見込みのリオデジャネイロ五輪アジア予選である。同五輪のアジア枠はわずか「2」。これを日本、オーストラリア、中国、韓国、北朝鮮などで争う。枠数と顔ぶれを見れば、少しの隙を見せることも許されない、厳しい戦いであることが一目瞭然だ。 実は、今回の女子W杯で優勝した米国の平均年齢は28.8歳であり、出場24カ国中最も高かった。日本は上から2番目の27.7歳。結果的にこの両チームがロンドン五輪を含めて世界の主要3大会で連続してファイナリストとなっていることを考えれば、経験値やチームとしての成熟度に重きをおいてメンバー選考をした佐々木監督の狙いは間違っていなかった。 世代交代は、成功を見せている今だからこそ求められるものであり、今だからこそ敢然とその難題に立ち向かっていけるはず。チーム最年少22歳の岩渕は、「最低限やらないといけないのは、今のなでしこをピークにしないこと。リオ五輪もあるし、その先もある。2020年東京五輪まで見据えてしっかりやりたい」ときっぱり言った。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)