「初診は2年後になります」親が絶句する児童精神科の実態 子どもの発達障害なかなか診ず…実はパンク状態、その深刻な背景
―しかし専門医が不足しています。背景には何があるのでしょうか。 「発達障害疑いの子が増えている理由については、発達障害が広く認知されるようになったことや診断基準の変更、製薬会社のマーケティングなど、複合的であるとされています。一方で専門に診ている医師の数は追いついていません。 児童精神科医は、小児科医もしくは精神科医がサブスペシャリティ(細かい専門分野)としてやる場合がありますが、いずれも道のりが非常に遠いです。児童精神科医になるための研修は、多くの場合、子どもの入院施設で常勤として勤めるのですが、一般精神科医よりもずっと夜遅くまで仕事があり、もちろん子どもだけでなく保護者も相手にします。体力的にもメンタル的にもハードで、途中で挫折する人も多いです。 また、開業する場合、成人の精神科より労力がかかり、看護師だけでなく、心理士や言語聴覚士、理学療法士など、人手も多く必要です。収入がさほど高くない一方で、体力と熱意が求められ、いろいろなことを犠牲にしなければならないです」
―専門医の数をすぐに増やすことは難しい中、子どもの早期支援のためには、どのような対応策が考えられますか。 「通常、医療機関で医師や心理士が対面で行っている質の良いアセスメントをオンラインでできるようになったり、アセスメントを外部の心理士らに委託し、かつ費用も抑えられるようになったりすることがまず大事だと思います。また、日本では最近公認心理師という国家資格ができました。まだ保険診療の診療報酬に該当する業務にほとんど携われていません。世の中に埋もれている心理士さんを活用することも必要だと思います。 もう一つ大事な観点があります。障害の捉え方には『医学モデル』と『社会モデル』の考え方があるのですが、前者は困っている人について、その人が病気だから、その人に問題があるからと捉え、治す考え方です。後者はその人の困り事には、病気だけの問題ではなく、社会に寛容さがないところに原因があると考えます。