「初診は2年後になります」親が絶句する児童精神科の実態 子どもの発達障害なかなか診ず…実はパンク状態、その深刻な背景
▽発達障害の可能性は「1クラスに3人」 発達障害は生まれつきの脳機能の障害とされ、生涯特性と付き合う必要がある。ASDは特定の物事にこだわりがある他、人の気持ちを理解することや共感することなど、対人コミュニケーションが苦手とされる。ADHDは落ち着きがなかったり、衝動的に行動したりするといった特性があり、LDは読み書きや計算が苦手だ。人によっては知的な遅れを伴う場合もある。いずれも障害の程度はさまざまで、必要な配慮もそれぞれ異なる。 文部科学省が2022年に公表した調査結果によると、公立小中学校の通常学級で、発達障害の可能性のある児童生徒は8・8%。35人学級なら3人ほどが該当する。厚生労働省の2016年の調査では、医療機関で発達障害と診断された人は全国で約48万人に上った。発達障害に対する認知度が高まったことが、診断者数増加の背景にあるとみられる。 2005年に発達障害者支援法が施行され、条文では発達障害の早期発見・早期支援がうたわれた。子どもの場合、発達段階に応じた適切な支援が行われないと、就学後に学習面や生活面で困難に直面し、うまく適応できずに二次障害を引き起こして、不登校や暴力行為などに発展してしまう恐れもある。
▽とにかく重要なのは「早期の支援」 しかし、早期の受診・支援が必要であるにもかかわらず、初診までの「待機期間」が長くなっている。総務省が全国27の発達障害を診る専門的医療機関を対象に行った調査(2017年発表)によると、発達障害が疑われる子どもの初診までに3カ月以上かかる医療機関は半数以上。最長10カ月待ちのケースもあった。初診を待っている患者数が316人に上る医療機関もあった。待機期間が長期化すれば、虐待リスクも上がる。 一方で、この待機期間を短縮できるよう、国は支援している。 厚生労働省やこども家庭庁によると、2019年度から「発達障害専門医療機関初診待機解消事業」を実施している。 具体的には、診断前に医師らが行っている生育歴の聞き取りや行動観察、発達検査といった評価を、地域の児童発達支援センターなどに外部委託する。医療機関での診療時間を短くすることによって、初診待機期間の短縮を目指す狙いという。