投資としての経済ニュース 最強の情報ポートフォリオはどう作る?
過去のニュースを効率的に調べるには「縮刷版」が最適
これは過去に報じられたニュースの読み方についても言えます。 例えばニュースに新展開があったとき、過去の経緯についておさらいをしたいと思うことがあるでしょう。この場合はグーグルなどで報道機関の過去記事を検索するのが手っ取り早いでしょう。少なくとも3カ月から半年以内の記事はいくつかヒットするはずです。こうした検索機能は紙媒体にはありません。 一方で、何年も前のニュースや、それが報じられた時代の「雰囲気」について調べるときには、紙媒体は強みを発揮します。主要な新聞社が発行している「縮刷版」という冊子を利用すればいいのです。 縮刷版とは、新聞紙面を縮小し、1カ月ごとにまとめた冊子です。1冊が数千円もするので個人で買うのは現実的ではありませんが、図書館や大企業の資料室にはたいてい揃っています。 例えば、最近で言えばトランプ氏が大統領に就任すると経済にどんな影響が出てくるかといった議論が盛んです。その中で、レーガン政権(1980年代)の経済政策と、トランプ氏が掲げる公約の類似性を指摘する声が増えています。 実際に、どんな点が似ていて、どんな点が違うのか。あるいは、レーガン氏が次期大統領に決まったころ、メディアや専門家はどんな予想をしていたのかは、当時の新聞を縮刷版で読むと非常によくわかります。 もちろん、「レーガノミクス」については、例えばウィキペディアなどのネット情報を調べれば出てきます。ただ、レーガン氏の就任前に日本でどんな議論が交わされたかや、当時の日本の経済状況がどうであったかは、ネットで検索しても断片的な情報しか得られません。 しかし、縮刷版を紐解くと、当時の「時代の雰囲気」までもが具体的に見えてきます。例えば、当時のソ連と日米の関係がどんなものだったかは、国際面や政治面を開けば一目瞭然です。少し読めば、現在の中国と日米の関係との類似性や相違点が浮かび上がってくるはずです。 記事だけではなく、広告も重要な情報源になります。日本の景気や技術水準がイメージできるし、記事とあわせて読めば、家電や自動車を巡る貿易摩擦など、当時の経済課題についても発見があるでしょう。単に「レーガン就任」に関する記事だけでなく、直接関係ない分野の記事や広告まで一緒に見ることができるので、その時代への理解が格段に深まるわけです。 6回にわたって経済ニュースの読み方について書いてきました。現在、メディアは変革期にあり、ここで書いたことが将来もずっと通用するとは思いません。紙媒体も、ネットもどんどん変化しており、この連載で指摘した各媒体の「弱点」も克服されていくでしょう。 しかし、当面、経済記事を読むのであれば、ポータルサイトに頼って古臭く見える紙媒体や、ネットの有料記事を避けることが、かえって不経済だということはわかっていただけたのではないでしょうか。 紙の新聞や、書籍、縮刷版といった紙媒体には面倒くささもありますが、一方でそれを利用することによるメリットもたくさんあります。身近で便利なネット情報と、それらを適切に組み合わせて読むことが、経済を深く理解する上で重要なのです。