「あぁ、ついに来たか」戦力外通告の非情な電話…“27歳で引退”大田阿斗里はなぜプロ野球選手から警察官に? 運命を変えた“最後のトライアウト”
苦難のデビュー10連敗、二度の戦力外通告、そしてトライアウトで手にした「一冊のパンフレット」……。2007年の高校生ドラフトで3巡目指名を受けた190cmの大型右腕は、なぜ引退後に警察官として生きることを選んだのか。14人の元プロ野球選手のセカンドキャリアに迫った『道を拓く 元プロ野球選手の転職』(扶桑社)より、大田阿斗里さん(元DeNA、オリックス)のエピソードを抜粋して紹介します。(全2回の1回目/後編へ) 【実際の写真】「プロ野球選手から警察官に驚きの転身」大田阿斗里(35歳)の制服姿がカッコいい!「初勝利に中畑さんも大喜び」横浜DeNAで活躍した現役時代も見る(全20枚)
苦難のデビュー10連敗「常に戦力外が頭の片隅に…」
ルーキーイヤーとなった08年、早くも一軍マウンドを経験した。1年目から5試合に登板して、9月25日、甲子園球場で行われた阪神タイガース戦では先発マウンドも託された。 「序盤は抑えていたんです。でも、1点を取られた瞬間から頭が真っ白になりました。そこからは身体が宙に浮いた状態で投げているような感じで、気がつけば5失点。ずっとファンだった金本(知憲)さんを三振に打ち取ったのは覚えているんですけど、それ以外のことはあまりよく覚えていません」 プロ1年目は、防御率8.03というほろ苦い結果に終わった。それでも大田はまだ19歳。彼の目の前には明るい未来しか待ち受けていないように思えた。 しかし、プロの世界は厳しかった。入団から5年が経過しても、一度も勝ち星を挙げることはできず、史上6人目となる「デビュー10連敗」という不名誉な記録を作ってしまった。 「6連敗ぐらいまでは悔しさも強くて、かなり引きずっていました。でも、それ以降は連敗のことについてはあまり気にせずに、自分の与えられた場所で一生懸命投げることしか考えていなかったです。とはいえ、プロ4年目ぐらいからは常に《戦力外通告》が頭の片隅にはありました」 それでも、球団は大田との契約を続けた。そして、プロ6年目となる13年5月に一軍登録される。6月22日のタイガース戦では、1点リードの5回表2死満塁の場面で2番手投手として登板すると、6回表まで無失点に抑え、チームは勝利、待望の一軍初勝利を挙げた。 「この瞬間、“これでようやくプロ野球選手になれたな”という思いはありました。でも、そこまでの大きな感動はなかった気がします。それよりも、それまでもちょくちょく一軍では投げていたので、僕がプロ初勝利だということを周りの人が気づいていなかったことの方が印象に残っていますね(笑)」 この年は自己最多となる38試合に登板。2勝4敗5ホールドと、一軍投手の中で少しずつ存在感を示すこととなった。しかし、翌年以降は右肩の故障に苦しめられる日々が訪れる。大田に転機が訪れようとしていた。
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