プロ野球の「新人王争い」は混沌。セ・パ両リーグとも投手が有力!!
続いてセ・リーグだが、こちらも投手陣の活躍が目立つ。やはり球界全体の〝投高打低〟の傾向は新人王争いにも影響しているようだ。現時点では、巨人の右腕ふたりが有力候補か。 まずは〝遅咲き〟の27歳、船迫大雅。8月18日のDeNA戦で今季40試合目の登板を果たし、この日はピンチを招きながらも無失点で18個目のホールドを記録した。 社会人・西濃運輸からドラフト5位で入団して2年目。昨季も36試合に登板して3勝1敗8ホールドをマークして実力を証明したが、投球回数が30イニングちょうどだったため、新人王の資格を今季に持ち越している。 プロ入団時に「ひとりでも多くの人に名前と顔を覚えてもらえるように頑張りますので、応援よろしくお願いします」と話し、読みが難解な「船迫大雅(ふなばさま・ひろまさ)」の知名度アップを目指していた。栄冠獲得で、その誓いにまた大きく前進するか。 もうひとりは、ドラフト1位ルーキーの西舘勇陽だ。中央大から入団すると、いきなり〝勝利の方程式〟の一角を担い、新人では史上初となるデビューから10試合連続ホールドを記録した。 その後は調子を落として6月末にファームに降格したものの、その間に新たな挑戦をして、1軍復帰マウンドとなった8月23日の中日戦でプロ初先発を飾った(5回4失点で黒星)。 年間を通した安定感では船迫が優位に思われる。ただ、史上初の記録を残したインパクトの強さでは西舘に軍配が上がるか。 また、6年ぶりのリーグ制覇を目指す広島がトップでゴールテープを切れば、黒原拓未の貢献度も評価されるだろう。21年にドラフト1位で入団した左腕は、過去2年は未勝利で、昨季は防御率10点台だった。 しかし今季、150キロ台の直球で強気に押す投球と、チェンジアップやスプリットで緩急をつけるスタイルがようやく開花した。 シーズン当初は先発も、新井貴浩監督ら首脳陣の中継ぎ転向案が大当たり。ホールドを記録する場面での登板は少ないものの、長く防御率1点台をキープする安定感でチームを支えている。 ところで、野手の名前がまったく挙がらないのも寂しいところ。開幕当初は、DeNAのドラフト1位ルーキー・度会隆輝が鮮烈な印象をファンに与えた。 1番打者で開幕スタメン出場を果たすと、第2打席で同点3ランを放ち「プロ初安打・初本塁打」を記録。翌日も2号2ランを放つなど4安打2打点の活躍で、セ・リーグ史上初となる「ルーキーの開幕戦から2試合連続本塁打」をマークした。 7月のオールスターゲームにもセ・リーグの「プラスワン投票」で選ばれるなどインパクトは大きいが、夏場に失速して8月以降は出番も激減。新人王受賞となると厳しい状況だ。 新人王レースが難航すれば「該当者なし」もある。最後の例は2000年のパ・リーグまでさかのぼるものの、それはあまりに寂しい。残りわずかのペナントレース。球界の未来を明るく照らす、若い彼らの熱いプレーにまだまだ期待したい。 取材・文/田尻耕太郎 写真/産経新聞社