山村学園・西川、花咲徳栄・上原、プロ注目投手同士の投げ合いは上原の勝ち!名将岩井監督はチームの成長と相手エース・西川を高評価【24年夏・埼玉大会】
<第106回全国高等学校野球選手権埼玉大会:花咲徳栄3-1山村学園>◇26日◇準決勝◇県営大宮球場 【トーナメント表】埼玉大会 準決勝までの結果一覧 とにかく別人のようであった。気迫も凄かった。一回死んだチームほど怖いものはない。王者は同じ失敗を2度繰り返さない。前の試合の教訓をきっちりと活かすことができた試合となった。 前の試合でコールド勝ちまであと1人という状態から追い付かれ、その後9回裏無死満塁のピンチを切る抜けるなど九死に一生を得たAシード・花咲徳栄vs Bシード・山村学園との一戦。 山村学園・西川歩(3年)vs 強打の花咲徳栄打線という図式。昨秋、今春と共に準決勝で激突しその時は中盤に山村学園が逆転も花咲徳栄が再逆転する形で連勝している。今回はどうか。 先発は、花咲徳栄が最速148km右腕・上原 堆我(3年)、山村学園が最速146km左腕・西川と両エースが先発し試合が始まる。 昨秋、今春同様に先制したのは今回も花咲徳栄。 花咲徳栄は初回、先頭の齋藤 聖斗(3年)がヒットを放ち出塁すると、キャッチャーがファンブルする間に2塁へと進む。続く目黒 亜門(3年)も四球を選び無死一、二塁とする。3番・生田目奏(3年)がきっちりと送りとその際、早くもヘッドスライディングを試みる。前の試合の反省からか、この日の花咲徳栄は初回から気迫が漲っていた。さらに続く石塚 裕惺(3年)が四球を選び一死満塁とすると、5番・田島 蓮夢(2年)の打球はファーストへの強いゴロとなる。この打球をファーストが弾きその間に二者が生還し先制。さらに続く横山 翔也(3年)もきっちりと犠飛を放つなど、あっという間に3点を先制した。 この場面、「落ち着いてやりたかったので守備重視でファーストは主将で行ったんですが裏目でした。選手達には試合前、初回無失点で切り抜けられれば勝てると伝えていた」(岡野監督)と、試合後悔やんでいたが、与えたくない先制点を野手が弾くという形で失う苦しいスタートとなった。 一気に畳み掛けたい花咲徳栄は3回表にも2巡目を迎えストライクゾーンを上げ低めの変化球をきっちりと見極める。一死から2番・目黒が死球で出塁すると、続く生田目のファーストゴロが相手エラーを誘い一死一、二塁とする。さらに4番・石塚も死球で出塁し一死満塁とするが、続く田島が併殺に倒れ無得点に終わる。 これでゲームの流れが膠着した。 すると、ここから山村学園が反撃を開始する。3回裏、二死から田中 大貴(3年)が左中間へ二塁打を放ち出塁すると、続く横田 蒼和(2年)がレフト前タイムリーを放ち1点を返す。 一方の花咲徳栄は4回以降、尻上がりに調子を上げてきた山村学園・西川の投球の前に苦しむ。さらにバントでのミスが出始めなかなか得点を奪えない。 4回表にはこの回先頭の横山が相手エラーで出塁するも続く田端 太貴(3年)は送れず後続も倒れ無得点に終わる。 6回表にもこの回先頭の横山がヒットで出塁すると相手ワイルドピッチで二塁へ進む。続く田端が今度はきっちりと送り一死三塁とする。8番・上原を迎え花咲徳栄ベンチはスクイズを敢行する。だが、「打者が上原君だったのでどこかでしてくるのではと思っていて、自分足を上げるので肩越しに走者が走ってくるのが見えた咄嗟にリリースを変えました。元々外の直球だったんですけど左打者のバッターボックス付近に投げて藤原もよく捕ってくれました。あの場面は岩井監督より自分の方が冴えてたなあと」と西川はウエストしスクイズを封じる。この場面、岩井監督は「左投手だからとはいえ、いくらなんでもランナー早く走り過ぎだよ」と試合後嘆いていたが「今日はこの辺からゾーンに入れた。これで流れが来るのでは」(西川)と、徐々にボールのキレが良くなる。 花咲徳栄は最終回にも横山がライト前ヒットを放ち出塁するが、田端の犠打は西川の好フィールディングにより併殺に倒れこの回も無得点に終わる。 流れが山村学園に傾いてもおかしくなかったが、この日それを食い止めたのは花咲徳栄のエース上原であった。 「右打者は直球、左打者は変化球が良かった」(上原) 最終回を迎えても辛いと評判の県営大宮球場で143kmを計測。終始安定した投球を披露する。 ピンチを招いたのは3回。先ほどの3回裏と6回裏、8回裏と全て山村学園の上位打線、田中、横田、藤原 将輝(3年)、吉田 翔大悟(3年)を迎えた時だ。6回裏にはこの回先頭の横田にライト前ヒットを浴びると、ワイルドピッチで二塁へと進めてしまう。さらに一死後、4番・吉田へ死球を与え一死一、二塁とするが後続を打ち取り無失点で切り抜ける。 8回裏にはこの回先頭の横田へ四球を与えると、一死後、吉田の打球はピッチャーへの強烈な打球であった。だがこれを上原がキャッチすると一走・横田も戻れず併殺と運にも恵まれていた。 結局、上原は9回111球を投げ、被安打4、7奪三振1失点で公式戦初完投。山村学園・西川も9回被安打5、4奪三振3失点とよく投げたが、上原が投げ勝った形だ。 花咲徳栄が山村学園に3対1で勝利し2年連続の決勝へ駒を進めた。 まずは山村学園、3度目の正直とはならなかった。 「初回でしたね。やり直したい。もうちょっと打てると思っていたんですが今日途中で青木に行かせようとしたんですが、守備に自信がない顔をしたので代打にして1年生にした。西川は3回までは硬かったがよく抑えた。5安打3失点は上出来ですよ」と、岡野監督も言う通り西川はよく投げた。とにかく初回の守備の乱れが大きく最後まで流れを引き寄せられなかった。今年のチームは山村学園には珍しく投高打低のチーム。勝機はあったが、守備のミスと下位打線が打てなかったことが大きく響いた。 一方の花咲徳栄はこれで5年ぶり甲子園まであと1勝。岩井監督は「3回のチャンスで一本出ていればコールドだった。任してダメで、監督が動いてダメだから今日は我慢だと。ベスト8からは楽なゲームは一つもないし、自分達の思い通りにいかないことも多い。次に次にというチームの意識が出てきたんで、打って当然、抑えて当然ではなく1球1球集中力が出てきて良い形だと思います。力を入れる所は入れて抜く所は抜いて球数少なくよく投げてくれました。前の試合はミスが多くて7点取られた。今日も守備のミスとかバントのミスとかミスは出たが引きずってもしょうがない。過去は返ってこない。ごめんなさいとかではなくて、未来を考えてやるって言うことはキツく言いました。棚ぼたの3点をよく守ってくれました。秋・春・夏と山村学園と3回当たったが西川君の成長も見れたし、うちの子の成長も見れたし埼玉の準決勝に相応しい試合。決勝は思い切ってやるだけ」と、ミスもあったが選手は責めず、先を見据えている。選手達も切り替えられている。決勝の相手は秋・春同様に昌平とAシード同士の一戦。熱戦となるに違いない。