社説:不登校離職 社会で理解広げ、親の支援を
不登校の児童、生徒が過去最多に上り、親が離職や休職を余儀なくされる問題が浮かび上がっている。 見守る心身の負担に加え、経済的にも追い込まれてしまいかねない。子どもとともに、親への支援も不可欠だ。 宇都宮市のNPO法人が2月、交流サイト(SNS)上で実施したアンケートでは、保護者約380人のうち、子の不登校をきっかけに「退職した」「休職した」が約2割いた。「早退、遅刻、欠勤が増えた」なども加えると、約7割に仕事への影響があったという。 収入が減った家庭は約4割で、うち月8万円超の減収となった家庭は3割超に上った。 学校への行き渋りや不登校が始まると、親は学習の遅れへの対応やフリースクールなどの居場所探し、送迎などに時間をとられる。 近年、小学低学年の増加率が高く、うつ症状を患う場合もある。子どもを独りで家に置いていけないと、寄り添いたい親の思いもある。 「職場への連絡や謝罪、学校とのやりとり、子どもの対応などで、精神的にもやりきれない」「収入が減るのは苦しいが、子どものそばにいなくてはと考えていた」…。親からは切実な声が上がる。生活が一変してしまう状況は、見過ごしにできない。 心ならぬ離職は社会的、経済的な損失ともいえる。 防ぐための職場のサポートが重要だ。法定の介護休暇制度で対応できる場合もあるが、一定期間の時短勤務や週休3日制が可能になる制度を設けた企業もある。自宅で子どもを見守りながら働けるテレワークなど、企業側は柔軟な働き方の選択肢を検討してほしい。 フリースクールなど、民間施設を利用する家庭向けの経済的支援も課題だろう。 通学や利用料は大きな負担となっている。京都では舞鶴と亀岡の2市、滋賀では近江八幡や草津など11市町が補助制度を設けているが、限定的だ。どこに住んでいても一定の支援が得られるよう検討してはどうか。 親を孤立させないことが求められる。 文部科学省の調査では、不登校の子どもの約4割が学校内外の機関で専門的な相談や支援を受けていなかった。 先の臨時国会で成立した本年度補正予算には、保護者への相談支援体制を強化する事業が盛り込まれた。当事者の困難と向き合った系統的な支援が必要だ。 昨年、東近江市の市長が「不登校になる大半の責任は親にある」などと発言し、批判を浴びて撤回したが、「甘え」や「サボっている」といった偏見や誤解はいまだにあり、当事者や親を苦しめている。 社会で正しい理解や認識を広げて、共有していくことも欠かせない。