城氏が語るアジア杯。なぜ森保Jはボール保持率23.7%でサウジアラビアに勝つことができたのか?
「負ければ終わり」の決勝トーナメント初戦のサウジアラビア戦は、予想通りの厳しい試合となったが、1-0で勝ちきった、守りきった、という意義は大きい。こういう勝ち方はチームに自信を植え付ける。 立ち上がりから、セカンドボールを拾われ、中盤を完全に支配された。日本のボール支配率はわずかに23.7%。決して相手に持たせたのではない。 しかも、サイドが壊滅していた。私は、サイドの攻防がこの試合のポイントになると踏んでいたが、サイドで高い位置を取ってくるサウジに対して長友、酒井の両サイドバックは完全に受ける形となってしまった。ディフェンスが偏るので、サイドチェンジで横の揺さぶりをかけられると、簡単にスペースを空けてしまうことになっていた。 特に酒井のサイドは、裏をとられ、ちぎられるシーンが目立った。本来ならば、相手を逆に下げるような、駆け引きが必要だったと思う。 それでも、日本が完封勝利を果たしたのは、“真ん中”を守りきったということ。1、2度は、危ないシーンもあったが、“真ん中”ではサウジの自由を奪った。 その理由は、吉田と冨安の絶妙の連携力だろう。吉田がニアを消しにいくと、冨安がファーでポジションを取る。その2人の距離感が抜群で、そこにボランチの遠藤がディフェンス寄りのアンカー的なポジションを取って、この2人とのバランサーとなった。中盤ではボールを奪われるミスが度々あったが、遠藤には、リスクマネージメントの意識がしっかりとあって、その後のプレッシャーが非常に速かった。何度もサウジの速攻を遅らせる役目を果たした。 “制空権”も189センチの吉田、188センチの富安の2人が支配した。元々、サウジに高さがないが、この2人に封じ込まれたことで、コーナーキックからの攻撃パターンも制限されたし、残り時間が少なくなっても“パワープレー”という王道に頼ることもできなかった。武藤や酒井が足を攣って倒れこむ激しい消耗戦にはなったが、この3人の連携力を軸に、日本のディフェンスは、ある程度、絞り込み踏ん張ることができたのである。