ザポリージャ原発占拠で浮かび上がるIAEAの「限界と新たな問い」
IAEAを使った欧米牽制もあり得てしまう[グロッシーIAEA事務局長(IAEAウェブサイトより)]
ロシア・ウクライナ戦争 では核兵器の役割に注目が集まっているが、原子力発電所がロシア軍によって攻撃、占領されたことは、原子力関係者に大きな衝撃を与えた。これは、スリーマイル島、チョルノービリ(チェルノブイリ)あるいは東京電力福島第一の各原子力発電所で発生した事故とは異なり、武力攻撃により原子力安全、核セキュリティ(核物質防護)、そして保障措置が脅かされるという、前代未聞の事態だったからである。 紛争下で原子力施設が武力攻撃にさらされる可能性については、確かに一定の認識はされてきた。また2001年の米国同時多発テロを受け、核テロのリスク対策も強化さたことは間違いない。しかし、いざウクライナにおいてチョルノービリが攻撃され、またザポリージャ原発がロシアによって占拠されるという一連の経緯の中で、IAEA(国際原子力機関)の役割にはおのずと限界があることが明らかになっている。 もちろん、これはラファエル・グロッシー事務局長以下、IAEAが期待された役割を果たしていないということではない。むしろIAEA憲章などで規定された任務の中で、可能なことをやっていると評価することはできよう。
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秋山信将