広島V2のカギを握る22歳・鈴木誠也の4番構想
優勝した昨年の広島の4番は、新井が67試合、松山が15試合、エルドレッドが2試合、そして退団したルナが開幕から59試合打った。鈴木には4番経験はなく、5番で38試合、6番で73試合、7番で11試合、1番で1試合だった。未経験の22歳の鈴木に4番を任せるのは賭けだろうが、WBCという大舞台での経験が、4番に必要なメンタルの強さを植えつけたのではないかという期待感がある。 「WBCでは、大事な送りバントを2つ成功させた。チームに貢献した」と緒方監督。 WBCの2次ラウンドのオランダ戦は、延長11回に6-6のままタイブレークに突入したが、無死一、二塁から始まる、そのタイブレークで一死二、三塁にするための送りバントを成功させたのが鈴木だった。その後、中田翔(日ハム)の2点タイムリーが生まれ、オランダとの死闘にケリをつけたのである。 大会を通じては、5試合で14打数3安打、打率.214と満足のいく結果を残すことはできなかったが、最年少参加となった鈴木本人は、「世界の舞台でやれてプラスになることもあった。この経験を生かしたい」と、収穫を口にしていた。チームとして40歳の新井にいつまでも4番を任すわけにはいかず、次なる4番打者をV2を狙いながら育てなければならない。そう考えると世界の舞台を踏んだ鈴木に、緒方監督が4番を託そうとする構想を抱くのもわからぬでもない。 昨年は、打率.335、29本、95打点。一発の怖さも率も兼ね備えた鈴木に4番の資格は十分にある。 鈴木は、昨年オフから機会あるごとに“神っている”からの決別を口にしている。 ここ一番で打つことを“神っている”と表現されるのではなく、それが“普通”“鈴木ならば打って当たり前”と見られるようにしなければならない、という決意である。 そのことを聞かされた緒方監督は「頼もしいコメント。活躍を本当に期待している」と言う。 ただ、2年前にも緒方監督は、このファン・ミーティングで、「1番・鈴木誠也」を明言しながら、結果が伴わずに、わずか2試合で失格の烙印を押して外したという苦い過去もある。開幕の阪神戦から「鈴木4番」とスタメン表に書き入れられるかどうかはわからないが、緒方監督は、今シーズンのどこかのタイミングで間違いなく「鈴木4番」を試すだろう。 チームは、精神支柱でもあり、昨年10勝を挙げた黒田博樹が抜けて数字以上の大きなハンディを背負った。緒方監督は、先発に再転向した大瀬良大地(25)と九里亜蓮(25)の4年目コンビを、その“ポスト黒田”候補に指名したが、やはり打線の爆発でカバーしなければならない。 今年のチームスローガンは「カ舞吼!(かぶく)」である。戦国時代に常識を逸脱したライフスタイルで世を生きぬく武士を「かぶきもの」と読んだが、そこから引っ張った造語だ。この日、緒方監督は「意味はよくわからない」と笑ったが、常識にとらわれない22歳の4番がチームに定着するとき広島のV2が見えてくるのかもしれない。