京都の「宇治抹茶」爆売れでピンチ 訪日客人気で販売制限、転売目的の大量購入も
海外でも人気が高い京都の「宇治抹茶」が、品薄になっている。急増する訪日外国人客が次々に買い求め、生産が追いつかないとして販売制限に踏み切る企業も出始めた。京都の茶問屋などは、茶道関係者や愛飲家ら長年の得意先への販売にも影響が出かねないとして苦渋の対応に迫られている。 【写真】宇治抹茶「バブル」あの有名アイスが火付け役 ■「いろんな国の方が来られる」 一部商品の購入制限について」。宇治茶製造販売丸久小山園(京都府宇治市)の京都高島屋店(京都市下京区)では11月11日から、こんな表示を掲げて抹茶の缶(20、40グラム入り)の購入を1人各1個に制限している。「いろんな国の方が来られ、昼には売り切れる状態だ」と担当者は驚く。 小山元也社長は「ここまで厳しい販売制限を行うのは初めて。当社の製品を評価いただいてありがたいのだが、心苦しい」と複雑な表情をみせる。需要が高まり始めたのは、訪日客が急回復した昨秋ごろ。同社の製品は比較的早くから輸出されていたこともあって海外での人気が高く、転売目的とみられる大量購入も一部商品で発生。SNS(交流サイト)を通じて品質の高さが海外で話題となるといった事情も重なり、引き合いが急増したという。 ■「固定客」の販売を確保する必要 半面、茶道や寺社関係者、茶の愛飲家ら古くからの「固定客」の販売を確保する必要もあり、今回、直営5店舗での販売制限に踏み切った。全国の小売店向けの卸売も受注量を制限している。「来年の新茶までになくなってしまっては大変。制限を解除する見通しは立たず、様子を見て判断せざるをえない」(小山俊美専務)という。 一保堂茶舗(京都市中京区)もインターネットと店舗の両方で一部商品の販売休止や制限を実施。その他にも京都府内の数社がホームページで同様のお知らせを掲載している。 財務省の貿易統計では、昨年の緑茶の輸出量は7579トンで、過去10年間で2・5倍に拡大。輸出額は、抹茶を含む粉末茶の需要拡大に伴って過去最高額の292億円を記録した。