次世代を担う日本代表をどう育成していくか?
■半世紀前と同じ光景 山口らが五輪世代がけん引 日本サッカー界初の外国人コーチで、その愛情あふれる指導でいまも「日本サッカーの父」と呼ばれるデットマール・クラマー氏の名言のひとつに「試合終了の笛は次の試合のキックオフだ」がある。古い話で恐縮だが、1964年の東京オリンピックの5・6位決定戦でユーゴスラビア代表に1対5で敗れ、全日程を終えた日本代表チームはその翌日、クラマー氏の号令のもとで冷たい秋雨が降る東京・駒沢陸上競技場で練習を行っている。釜本邦茂氏をはじめとする代表メンバーは、当時をこう振り返る。「あれが4年後のメキシコオリンピックで獲得した銅メダルへの第一歩になった」。 コロンビアに完敗し、ブラジル大会敗退が決まった翌日の2014年6月25日の日本代表のベースキャンプ地イトゥには、半世紀前と同じ光景が繰り広げられていた。「ちょっとやるっしょ!」。山口の呼びかけに清武や齋藤、権田をはじめとするロンドンオリンピック世代が呼応し、帰国前の慌ただしい時間の合間を縫って練習が行われたのだ。これからの4年間は自分たちが引っ張る。不退転の決意が伝わってくる姿勢は、文字通りロシア大会へのキックオフを告げていた。 ■水沼氏「悔しさより力不足を感じたのでは」 水沼氏が言う。「山口をはじめとする全員が悔しさよりも力不足を感じたんだと思うし、この思いを貫いていって欲しい。育成上がりを含めた若い選手たちは確かに上手くなってきているし、もちろん育成段階では技術や戦術の指導うんぬんも大事だと思う。しかし、戦う上でベースとなる強いメンタリティーを身につけさせる指導も必要だということも、日本サッカー界全体であらためて考えないといけない」。 1993年1月1日以降に生まれたリオデジャネイロ世代では、川崎フロンターレのMF大島僚太、鹿島アントラーズのDF植田直通、ヴィッセル神戸のDF岩波拓也、清水エスパルスのMF石毛秀樹らJ1の舞台でレギュラーとして活躍している選手が少なくない。しかし、リーグ全体や代表チームを活性化させていくには、強い心をその体に搭載した若手がもっともっと台頭してくる必要がある。 新生日本代表チームの顔ぶれは新監督の趣向次第で変わってくるはずだが、土台となる部分には2つのオリンピック世代、ロンドン組の「覚悟」とリオデジャネイロ組の「覚醒」が何よりも必要不可欠となる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)