何のために経営しているのか? 社員が働く意味を見出すための「Philosophyの3原則」とは?
次に浮かぶ疑問はおそらく、「どうやってMVVを策定すれば良いのか?」でしょう。実際、多くの経営者から、理念の重要性は理解していても、定め方がわからないという声を聞きます。そこで役立つのが、次に挙げる視野を広げて俯瞰する「3つのスイッチ」という考え方です。 時間観を広げる「タイムスイッチ」 人間観を広げる「ロールスイッチ」 空間観を広げる「チャンス&リスクスイッチ」 「タイムスイッチ」は、時間を「短期と長期」「過去と未来」と、相互に切り替えて思考する枠組み。経営や事業を考える際、特に利益などの数字が絡んでくると、短期的なものに目を向けてしまいがちです。 それが必要な局面もある一方、同時に長期へと目線を向けて、そこからさかのぼって考える必要もあります。例えば、「最終的に何をやりたいか」「10年後にどうなっていたいか」から逆算して、「では、今どうすべきか」を思考するのです。 「ロールスイッチ」は、立場や役割などを切り替えて考える枠組み。相手の立場になる、お客さま目線になる、などと使うものです。例えば、社員が自社商品やサービスを考える際は、お客さまの目線で見てみる。 特にBtoCビジネスであれば、実際に顧客として自社商品やサービスを利用し、体感することで、「お客さまは、なぜ自社を選んでくれているのか」を思考していきます。 「チャンス&リスクスイッチ」は、チャンスとリスクの両方に目を向ける枠組み。一般的にマイナスや無駄だと捉えられていることに、むしろ機会や利点を見出す考え方です。 例えば富士フイルムは、事業転換に成功した企業としてよく挙げられます。同社はもともと、写真フィルム事業を主力としていましたが、デジタルカメラの登場により一気に売上が減少し、斜陽になるという大きなマイナスが起こりました。しかし、そんな危機をチャンスにするため、自社の強みである技術力を活かして、化粧品や医薬品の分野で大きなチャンスをつかむことができたわけです。 そもそも人間は、短期的視点に縛られてしまう生き物だといえます。それは行動経済学の中で、人を支配するバイアスとして「現状維持バイアス」がもっとも強く働くといわれていることからもわかるでしょう。 つまり、基本的に人間は今の状態を維持したいと考えるものであり、変化することを拒んでしまうということです。しかし、成長とは変化すること。それでは、いつまでも発展していきません。 そこで「3つのスイッチ」を意識することで、そうした現状維持バイアスから解き放たれ、非連続の思考をすることができるようになります。
宮本 茂/白木 俊行