中国の経済回復は絶望的、コロナ禍より深刻な消費低迷でシャッター街続出…2025年の政策に消費刺激の具体策ゼロ
■ 消費の拡大はスローガンばかり 消費拡大のためには、民営経済促進法実施、企業ルールに関する法執行アクションを展開、全国統一大市場建設の指導を制定、プラットフォーム経済の健康発展を促進、包括的な税制改革、資本市場投融資総合改革の深化などのキーワードが躍った。 だが、それをどのように実行するかはあいまいなままだった。中央政府は退職者の基本養老金の適度な引き上げ、都市農村の住民基礎養老金の引き上げ、都市農村の医療保険の政府補助基準引き上げなどについては具体的に地方政府に対して要請している。だが、若者の個人消費を刺激するためにどうするかについての見通しはあまり出ていない。 中国経済にとって来年の最大の懸念は米トランプ政権の関税引き上げが中国経済にどれほどのインパクトを与えるかだ。一部エコノミストは、中国の景気刺激策がうまくいけば、GDP成長4.5%くらいは維持できるという甘い予測をする人もいる。 しかし、不動産市場、社会福祉市場の回復は今のところ見込みがたっておらず、消費の拡大も、スローガンばかりが大きいが、実際に庶民に消費意欲の向上が見えていない。本質は大衆の所得が圧迫されていることだ。習近平政権が目下進めている増税政策や、いわゆる統制強化による罰金の増額などが、声高に打ち出す景気刺激策のムードを相殺している。 中央経済工作会議前に、付鵬や高善文ら中国の著名なエコノミストたちが、中国経済の問題について忌憚なく指摘し警告する講演を行っていた。だが、彼らの発言が引用されたSNSやセルフメディアの記事はことごとく削除され、中国経済の問題点を指摘するエコノミストの発言すら、「国家安全上の問題」として規制、取り締まりの対象になることが明らかになった。
■ 経済政策、実は打てる手がほとんどない 高善文は、はっきりと中国が発表する経済データの信頼性に問題があることを指摘し、現在の失業者が正常時よりも4700万人多いとしている。ここに2025年の新卒生1222万人が加われば、おそらく中国史上最高の失業率を更新し、非常に厳しい社会不安に直面するだろう。 中国の家政サービスプラットフォーム「58到家」に報告書によると、最近、家政サービス業務の高学歴化と若返り化が顕著で、今年の大学卒業生の家政業務登録は2023年の4.2倍になっているという。ここに空前の非婚と低出生率問題が重なり少子高齢化が加速度的に進むとみられている。 こうした経済構造の問題点を指摘して対策を公に討論するということが、習近平独裁体制では封じ込められている。そのため、地方官僚たちは自らの意見や見識をもって自由な政策を試すことはできず、結局、上の指示を聞く以外なにもしない「躺平主義」に陥り、そのことが経済の活力を削ぎ落すことになっている。 つまり内需が急速に縮小し、外需は厳しい制裁的関税に直面し、中国として効果的な経済政策の打つ手が実はほとんどない、ということになる。 こうした中国経済先行きの絶望感を反映する形で、年末に向かって大量のテナント解約ブームが起きていると、中国のセルフメディアで話題になっている。いわゆる個人事業主がやっている売店、飲食店、ネイルショップ、マッサージ店、理容店などが経営を維持できなくなって来年のテナント契約更新をやめているらしい。その状況が、テナント家賃の急暴落という形で示されているという。 これは公式な統計発表が出されているわけではない。SNSで、「テナントを解約するといったら1万5000元だったテナント料がいきなり8000万元に値下げされた」といった証言が年末に向けて急激に増えたことで、テナント解約ブームが起きていると人々が噂しあっているのだ。