錦織圭、西岡良仁、ダニエル太郎らを間近で見てきた高田充・日本男子ナショナルチーム・ヘッドコーチに聞く2024年シーズン【テニス】
「芽が出てきた選手を逃さずに」しっかりジュニアを育て上げることが今の日本のテニス界に求められる
――世界のテニスの流れをみると、アメリカが一時低迷からの復活を遂げ、イタリア勢、そしてアジアでは中国が男女ともメインドローに名を連ねるようになっています。予想するのは難しいかもしれまんが、今後の展開はどうなっていきそうですか。 「ジョコビッチがまだトップにいるものの、それ以外のところは、若手がどんどん出てきている。少し前まで安定した強さを見せていたチチパスやルブレフだったり、あの辺の力関係が少しづつ若手に押されてきている印象があります。イタリアの若手もすごい伸びてきている。ムゼッティも一時は低迷したけど、ここに来て上がってきています。シナーと共に同年代の選手が良いライバル関係にあると思います、それはまたアメリカも然りです」 ――切磋琢磨していくことでレベルが上がってくる図式はスペインの例にもありました。 「人数的に考えるとそれだけのエリート的なジュニアが大人数揃ってくるということはタイミングもあります」 ――それは日本には難しいところでしょうか? 「確かに陸続きのヨーロッパにはアドバンテージがあります。じゃあイタリアのようにチャレンジャー大会を増やしたらどうか?というのもありますが、それも簡単なことではありません。国内の選手だけに特化したものであれば(ヨーロッパのチャレンジャーのようなレベルアップが)ということもあります」 「例えば全日本ジュニアで上位にいく選手はタレントがあって、世界で揉まれれば活躍できる可能性は十分あると思います。でも、そういう選手が同年代に5、6人いるというのは、なかなかあることではない。毎年もしくは何年かに1回、芽が出てきた選手を逃さずにしっかり育て上げるというのは、今の日本のテニスができることだと思っています」 ――坂本怜選手が今年の全豪オープンジュニアで優勝しましたが、それは明るい材料となりそうです。そのような選手を「もう1人」という。 「望月慎太郎(2019年ウインブルドンジュニア優勝)、坂本怜(2024年全豪オープンジュニア優勝)ときて、今度は本田尚也(2024年ウィンブルドンジュニアベスト4)が出てきた。今年の14歳以下では世界大会で8位、常にベスト8には入っているんです。今度は、また一つカテゴリーが上がったジュニアデビスカップで世界のライバルたちと戦う経験の中で、グランドスラムジュニアに出た時に『あの時16歳以下で戦っていた奴らが出ている』となると、また“景色”が違ってくるでしょう。例えば(望月)慎太郎は14歳の時にアルカラスに勝っていて、その時のメンバーがある程度上にいく。いきなりグランドスラムジュニアに来て、どこの誰かもわからない対戦相手ではなく、コンスタントに14歳、16歳以下で世界大会に出ていてある程度、結果を残しているというのが大事になってきます」 ――10年前のテニスからさらに速く、そして強度も増しているように感じますが、今後も変化していくのでしょうか。 「もともと体格の良い選手がさらにフィジカルが強くなっているのが大きな特徴だと思いますだから(崩していくのが)大変なのだと思います。でも、女子は全仏オープン決勝に行ったイタリアのパオリーニがは身長が163センチぐらい。そういう意味ではいつの時代も何か道はある」 ――西岡選手のプレーもいつ観ても(大柄な選手に立ち向かう姿に)頭が下がり感動します。 「感情的になりよくない行動をとることもありますが頑張っている。(望月)慎太郎も去年の木下グループジャパンオープンでの活躍はなかなかできることではない。あの大会は、『日本人の体格でも世界で通用する』ということを証明した試合でした。ただ、彼自身まだ波があるので(チャンスが来るまで)レベルアップしなければならない。トップ10と戦えるなんて昔では考えられないことです」 ――お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
知花泰三