石破内閣では「官邸が機能していない」 トランプ次期米政権対策 「強すぎる」と不満が出たほどの安倍政権、支えた議員に活躍の場を
【八幡和郎 亡国宰相】 「官邸主導」という言葉を、安倍晋三内閣のときには、よく耳にした。世界各国では、大統領や首相の官邸スタッフが政策をつくり、与野党や省庁間の調整にあたっている。 【写真】大相撲を観戦する、安倍首相、トランプ米大統領、メラニア夫人、昭恵夫人=2019年5月26日 ところが、日本では「省あって国なし」とか「事務次官会議が閣議より重要」という状態だった。また、財務省主計局や自民党税調などが過度に財政的見地から政策に介入し、首相の指導力は弱かった。 さまざまな改善案があって、私は「事務次官廃止論」を唱えていた。安倍内閣の菅義偉官房長官は、内閣人事局の権限を強化して各省庁の次官人事を支配した。 安倍内閣は再登板でもあり、気心が知れた経産省出身者などを活用して、「強すぎる」と不満が出るほど強力な官邸が実現した。 ところが、石破茂内閣では「官邸が機能していない」と嘆かれている。石破首相は地方創生相を最後に8年間も政府や党本部を離れていたうえ、石破派も解体したので信頼するスタッフがいない。 赤沢亮正経済再生相が石破首相の側近筆頭だが中途半端な立場だし、官房副長官も非力といえる。筆頭秘書官は防衛省出身の槌道(つちみち)明宏氏と、政策秘書だった吉村麻央氏で首相の気心は知っているが、永田町や霞が関でのネットワークは不十分だ。 各省庁からの秘書官は以前からの知己ではないので、顔と名前が一致するにも時間がかかったという。かつて石破派から出ていった議員を呼び戻したり、林芳正官房長官にもっと権限を与えたらと思うが実現しない。 ドナルド・トランプ次期米政権対策としても、安倍政権を支えた議員に活躍の場を与えるべきだ。少額の不記載で自身も比例重複から外れた稲田朋美氏は「みんな不利な条件で選挙をして勝利したのだから、もう区切りとすべきだ」と若い議員を気遣う。 トランプ政権と連携して、いまこそ活躍すべき西村康稔元経産相は、党の処分が継続している。「エネルギーなど政策面での活動で輪を広げたい」というが、惜しいことだ。 安倍元首相の妻、昭恵さんの斡旋(あっせん)で、トランプ大統領との会談が実現しそうな石破首相が、挙党態勢に踏み切らないとすれば、虫が良すぎるし、トランプ大統領の不信を買うだろう。