LDHらしくなくていい―40点の自分に価値があると気づけた片寄涼太の“生き方”
きっかけは漢字テスト。100点満点ではない自分の価値もあると気づいた
――人の目を気にしないで済むようになれたのはいつからでしょうか。 片寄涼太: 中学生のとき、学習塾で毎週漢字テストがあったんですけど、その勉強が妙にストレスでしんどかった時期があったんです。そのとき先生に「お前、毎回100点取ろうとしてるんじゃないの?」と言われてハッとしました。毎回、100点をとらなくてもいいのか、とそのとき初めて思って、ふっと楽になりました。 そういう考え方は、この業界に入ってからも思うことが結構あります。ライブとか“生もの”で勝負をする業界にいるので、何が100点かはこちらが決められるものじゃない。僕が40点で「何も出しきれなかった」と思っていても、その葛藤する僕の姿が好きな人もいるだろうし。そうやって苦しんでいる姿も含めて作品やライブになるということに気づけたのはよかったですね。 お芝居も、始めたばかりのころはうまいわけがないんですけど、それでも何か受け取ってくれる人がいるのは、やっぱり自分自身が一生懸命やったからかな、とか。歌も、うまい下手ではなく、人間らしく感情を伝えることのほうが実は大事なのかな、と思ったり。そこに何か丹精を込めたっていうことに価値があると思えるようになったかもしれません。何が正解かは決められないですよね。 一方で、もしかしたら僕らが一番気をつけなければいけないのは“気持ちの押しつけ”っぽくならないようにすることなのかな、と。楽しいことも大事、でも「頑張ろう」を押しつけすぎるのはちょっと違うのかもしれません。頑張りたいと思っている人には背中を押せるように、頑張れないと思っている人には寄り添えるような発信ができれば、と思います。
18歳でデビュー。でも、もうちょっと子どもでいたかった
――現在20歳となっている成年年齢が、2022年4月から18歳に引き下げられます。片寄さんは18歳でデビューされましたが、当時はどんなことを考えていましたか? 片寄涼太: 普通の18歳とは違って、入社したての社会人みたいなことをちょっと早送りでやらせてもらっていた感覚です。 ただ、今思うと、大したことは考えてなかったなという感じはしますね。いろんなことがわけわかってなかったなと思います。仕事をすることに対してもそうだし、なんで大人の人たちは自分らにこういうことを言うんだろうということも全く意味がわからなくて…。意味がわからないと動けないタイプなんですよ、僕。「わかりました!偉い人が言うからそういうことっすよね!」ってなれないので、そこは結構、自分を小さくしてたなっていうのが18歳ぐらいかな、と思います。 ――片寄さんが18歳の自分に声をかけるとするとしたら、どのような言葉をかけますか? 片寄涼太: 「いろんな人の言うことを聞いて、近道するか、自分の道を貫いて遠回りするかを選びな」と言いたいですね。 ――急いで大人にならなくてもいい、ということでしょうか。 片寄涼太: そうですね。今の18歳は大人っぽく感じます。ネットが普及して、いろんな情報が簡単に手に入るようになったから、考え方が大人になっている子が多いんじゃないかな。急いで大人になりたい人はなればいいと思うけど、僕自身が18歳のときはもうちょっと子どもでいたかったのかな、という気はします。 18歳のときの自分の考え方は否定したくないんです。遠回りしたからこそ、でこぼこ道も含めて経験できて今の自分がある、と思うから。もちろん、人の言う通りにしていたら近道もできたのかもしれないけど、それだと楽しくないという人もいるかもしれないですよね。「他の意見もあるけど、自分の考えを貫くという選択肢もあるよ」ということは18歳の自分にも言いたいですね。 ----- 片寄涼太 1994年生まれ。2012年11月、GENERATIONS from EXILE TRIBE ボーカルとしてメジャーデビュー。2014年、ドラマ『GTO』にて俳優活動を開始。主な出演作にはドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(2019)、『病室で念仏を唱えないでください』(2020)、映画では『兄に愛されすぎて困ってます』(2017)、『午前0時、キスしに来てよ』(2019)など。アーティストとしてだけでなく、俳優として、そして国内だけでなくアジアでも活動の幅を広げている。 文:ふくだりょうこ 制作協力:Viibar