思っていた日本と違う? 2回目の「東京五輪」は世界に何を発信できるか
●美しき誤解が「明るみに」
今から57年前の1964(昭和39)年に東京で開かれた前回の五輪では、第2次世界大戦後の日本の高度成長の中で行われ、開幕に合わせて東海道新幹線が開通するなど「日本のテクノロジーや経済的なポテンシャルを世界に示す」大会になったという。中野教授も「(先進国に)追いつけ追い越せ、で頑張っている真っただ中で、その象徴だった」と語る。 しかし、今回の五輪については「今のところ、日本の衰退を感じる五輪」と悲観的な見方を示す。五輪の開幕が近づくにつれ、「世界にいまの“日本の姿”が報じられてしまっている。世界的に見ても、日本は今まで思っていたような進んだ国ではないことを印象づけて終わってしまう恐れがある。ある種“美しき誤解”があったのが明るみに出てしまった」。
◇ 東京で2回目の開催となる今回の五輪は、7月23日午後8時に国立競技場で開会式を迎える。開会式をめぐっては、作曲の一部を担当した小山田圭吾さんが過去に行った障害のある同級生へのいじめで、ディレクターを努めていた小林賢太郎さんがナチスドイツのホロコーストを揶揄(やゆ)する過去のコントで、それぞれ直前に辞める事態となった。大会組織委員会でも今年2月に森喜朗前会長が女性蔑視発言で辞任した。 菅首相は7月9日の会見で「コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が一つになれること、人類の努力と叡智で難局を乗り越えていけることを東京から発信したい」「歴史に残る大会を実現したい」と意気込みを語った。8月8日までの17日間、日本は世界にどんな姿を発信できるだろうか。