今なお再開白紙…なぜJリーグは「痛みを伴う」緊急改革を決断したのか?
感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルス禍から、J3までを含めて56を数えるJクラブを守るために、Jリーグ本体が痛みを伴った緊急改革に打って出ることを決めた。 Jリーグは15日にウェブ会議方式で臨時理事会を開催。終了後にビデオ通話アプリ『Zoom』を利用して行われたメディアブリーフィングで、村井満チェアマンがすでに承認されている2020年度予算の大幅削減と、一部が実行に移されている中期成長計画の凍結を表明した。 昨年12月の総会で承認された2020年度の予算(正味財産増減計算書)のうち、収入となる経常収益は2019年度から26億3500万円増の291億6800万円を計上。そのうち公衆送信権料収益(202億9300万円)と協賛金収益(48億7900万円)の合計額が、実に約86.3%を占めている。 一般には聞き慣れない公衆送信権料収益は、2016年度までは放送権料収益という科目名だった。言うまでもなく2017年度からスタートした、スポーツチャンネルの『DAZN』を運営するイギリスのDAZN Groupと結んだ10年間、総額約2100億円の大型放映権契約の今年度分となる。 そして、支出となる経常費用304億5900万円のうち、全56クラブへの配分金の合計が151億6500万円で最多を占めている。そして、配分金の大半をJ1クラブへ3億5000万円が、J2へ1億5000万円が、J3へ3000万円がそれぞれ支給される均等配分金が占めている。 DAZN Groupとの契約でほぼ倍増した均等配分金に商品化権料などが加わった配分金が、Jクラブの経営を大きくアシストしている。Jリーグから開示されている最新の数字となる2018年度決算内の配分金の平均額は、J1で4億8700万円、J2で1億6800万円、J3で3500万円になっている。
ひるがえって営業収益から営業費用を差し引いた営業利益の平均額は、J1で1億4400万円、J2で1100万円、J3でマイナス1600万円となっている。一連の数字が何を意味しているのかは、メディアブリーフィングで村井チェアマンが発した言葉を聞けば一目瞭然だろう。 「こうした配分金が減額されると、各クラブの経営へ極めて大きなインパクトをもたらします。放映権料(公衆送信権料収益)以外の収益を含めて、仮に何かしらのダウンサイドリスク(下振れリスク)があるとしたら、リーグはしっかりとコストコントロールをしながら、倹約をしながら配分金をしっかりと守る経営努力をしていきます、と今日の臨時理事会で表明した次第です」 そして、懸念されているダウンサイドリスクが、まさに現在進行形で進んでいる。新型コロナウイルス禍で2月下旬から中断されている公式戦は、3度設定されては流れた再開目標がいま現在では白紙状態に戻され、J1では全18クラブが活動を停止させている。村井チェアマンが続ける。 「主要都市で発令されている緊急事態宣言の様子を見て、5月の連休明けから1カ月ぐらいの時間をかけて、要は6月に再開が可能なのか、7月になるのか、8月になるのか、あるいはもっと深いところになるのか。このあたりは、今日の段階で私の方から申し上げることができません」 日本社会全体が予断を許さない事態の真っ只中にいるからこそ、日本プロサッカーリーグという公益社団法人の舵を取るトップとして、リスクマネジメントを徹底しておく。経常収益が予算よりも減じる場合に備えて、配分金を除いた経常費用を切り詰める準備を開始したわけだ。 分配金以外の経常費用の科目では、リーグ運営経費が26億100万円、その他が123億5600万円となっている。これらの原資に公衆送信権料収益と協賛金収益の合計額から約100億円があてがわれているなかで、村井チェアマンはある号令を発したと臨時理事会で報告した。 「100億円から少なくとも30%、最大で50%の幅で削減を見込もうと号令をかけました。平時では投資へ回す金額を、今回は新型コロナウイルス対策に備えようと。いまは確定していないものの、もしも収入が減じたときにいつでも対応できるように準備に入ろうと。もちろん、いまは手元に30億円や50億円があるわけではないので、相当の痛みを伴うものだと思っています」