今なお再開白紙…なぜJリーグは「痛みを伴う」緊急改革を決断したのか?
予算を削減する対象は今後、Jリーグ内において急ピッチで協議していく。4月に入って予算も執行されているなかで、すでに契約が発注されているものもあれば、動き出しているものもある。後者の代表格が、臨時理事会で凍結することが報告された「中期計画2022」となる。 Jリーグは2018年度の段階で、2030年度までの基本成長計画となる「ビジョン2030」を策定。ピッチ上で見せるフットボールだけでなく社会連携や経営基盤など、5つの領域でテーマを定めている。そして、どの程度達成できているのかを2022年度に確認するプランを立てていた。 2030年度へ向けた青写真は変えないものの、J1で年間120試合の満員を目指すなど、2022年度までの達成を目指していた中間目標を凍結する。今シーズンだけでなく、最悪の場合は来シーズンも新型コロナウイルス対策に追われると見越した決断だと村井チェアマンは説明する。 「新型コロナウイルス対策にすべてのリソースを集中して備えていきたい。そのためにも重要な事案の人事や対策費などを(最高議決機関の)理事会に諮らなくても機動的に執行できるように、チェアマンもしくは業務執行理事に権限を一定程度授権していただく意思決定をしました。当然のことですが、すべてのことに対して理事会は報告義務を負うことになります」 この日の臨時理事会ではJクラブの代表取締役や理事長らで構成される、実行委員会ですでに決まっていた「昇格あり、降格なし」の大会方式変更やコロナ対策に特化した新たな融資制度などが追認された。ブリーフィングの最後に、村井チェアマンが未来を見すえながら力を込めた。 「手なりでできることだけをやっていては、マインドを変えることはできません。ドラスティックに号令をかけて、そのなかから本当に大事なものは残していくプロセスを進めていきます」 原則として分割で支給される配分金の前倒しによる一括支給を望んでいるクラブも、あるいは新たな融資制度を申請してきているクラブも現時点ではない。すでに宣言されている、競争から共存への一時的なモードチェンジがより鮮明に打ち出されたなかで、未曾有の危機を乗り越えていくために、Jリーグ本体とJクラブの二人三脚がさらに加速されていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)