泥沼甲子園で雨天強行されたCS阪神ー横浜DeNA戦の賛否
雨はずっと降り続いていた。グラウンドはまるで田圃地帯。黒土の内野のいたるところに水たまりが出来、ダイヤモンドは、ナイター照明を浴びて湖のように光っていた。外野の芝もビショ濡れ。ボールは泥にまみれて転がらず、外野手が走れば、水しびきが上がった。ファウルになるはずのゴロがヒットになり、処理した梅野は、転んで悪送球のミス。外野に転がればワンヒットがツーベースになり簡単にタイムリーに変わった。 マウンドや打席には、阪神園芸のスタッフが、速乾性の土をイニング交代の度に大量に入れて整備するが、もはや、そこは野球のできる状態ではなかった。選手のユニホームや顔まで泥だらけだ。 ネットのツイートの多数が「阪神園芸さん、がんばれ!」が占めるようでは笑えぬ悲劇である。 10月15日、甲子園。1時間3分遅れで、雨の中、強行開催されたセ・リーグのクライマックスシリーズ、ファーストステージの第2戦、阪神ー横浜DeNA戦は、両軍で31安打が乱れ飛ぶシーソーゲームとなり、13-6で横浜DeNAが勝ち1勝1敗の逆王手をかけることになった。 4時間35分のまさに泥試合に敗れた金本監督は、「選手が気の毒で、見ていて申し訳ないと思った」と、選手を気遣い、逆に最悪コンディションを味方につけて逆王手とした横浜DeNAのラミレス監督も「厳しいコンディションでの試合であることは間違いなかった。ヒットは出たが、半分はこの状況でなければ、そうならなかったと思う」と、複雑な表情を浮かべた。 なぜ泥沼雨天で球界の最大イベントのひとつであるはずの試合は強行決行されたのか。 レギュラーシーズンの場合、試合開始までの試合開催、中止、順延は、主催者、つまりホーム球団が決定する権限を持っているが、CSは、セ・リーグが決定することになっている。 悪天候予報の中、1時間3分遅れでの強行を決定したセ・リーグの杵渕和秀統括は、「CSの性質を考えて判断した。できるだけ試合を行うことが最優先で、やったからには9回が基本。レギュラーシーズンの中止とは意味合いが違う。両チーム、ファンにとって大変なところでやっていただき苦労をかけた」と説明をした。 16日の天気予報も、当初降水確率80%で、さらに悪かった。もし15、16日と連続で雨天中止となると、17日の予備日を使うことなく阪神のファイナルステージ進出が決まるところだった。CSでは予備日を含めた日程で、全試合を開催できなかった場合、順延は行わずに開催打ち切りとなり、その時点の勝敗でステージ勝者を決定することになっている。 中途半端な形で一大イベントであるCSを決着させることへの“忖度”があったのだろう。不利になる横浜DeNA、足を運んでくれたファンへの配慮。またCSがたった1試合で終わると、レギュラーシーズンの2位を確保した阪神球団の興行収入にも、軽く2億円以上の損害を与えることにもなってしまう。 では、この連盟判断は正しかったのだろうか。 阪神OBで評論家の池田親興さんは、怒りの声をあげる。 「絶対にやってはならない試合。これが野球と呼べるものか。私の長い野球人生を通じて、こんな状態で行われた野球は見たことがない。日本一のグラウンドである甲子園が、あそこまでになるのは、よっぽどの雨。選手は、ケガをするリスクも高く、この雨の中、4時間35分も試合を見たファンにも失礼。健康問題もある。CSが、レギュラーシーズンの消化試合をなくして、メジャーのポストシーズンのように野球界の盛り上がりを考えて創設されたのであれば最高の野球をファンに見せるべきで、泥沼の中での試合は決行すべきでなかった。CS創設の精神や目的に反していると思う」 例え2日連続の雨で試合がなくなり横浜DeNAが1試合で敗退することになっても、雨天中止にすべきだったという意見だ。