生成AIで「仕事」が根底から変わる SDGsのカギ 複雑な社内文書活用支援のシナモン会長に聞く
イノベーションを生み出すSDGs
――SDGsと先端テクノロジーはどのような関係にありますか? 「SDGsの前身に当たるミレニアム開発目標(MDGs)では、貧困と飢餓の撲滅や、ジェンダー平等など2015年までに達成すべき8つの目標が掲げられていました。成果を上げましたが、SDGsに比べると認知度は高くなく、各国政府の取り組みにとどまっていた面があります」 「SDGsでは設計思想が変わりました。新興国だけでなく先進国、政府だけでなく民間にも取り組みを広げる『マルチステークホルダー』の考え方に基づき、広告的手法も活用して認知度を高める。最も大きいのは『バックキャスティング』の手法をとっている点です。バックキャスティングとは、最初に目標とする未来像を描き、その未来像から逆算して今すべき活動や、優先順位を決める手法のことです」 「現在できることを積み上げて目標に近づいていく『フォアキャスティング』とバックキャスティングとのギャップが、イノベーション(技術革新)を生み出します。新しいテクノロジーを生み出すインセンティブが発生しているともいえます」
AIが抱える消費電力の課題
――先端テクノロジーの活用に課題はあるのでしょうか? 「デジタルテクノロジーをはじめとする最先端の技術は、SDGs達成に大きく貢献するでしょう。一方で、テクノロジーは采配を誤るとネガティブに機能する懸念もあります。今、世界はオープンAIによる対話型AI『Chat(チャット)GPT』の力に沸き立ち、その正確性などに注目が集まっていますが、早晩、消費電力が大きな問題になると思います」 「NTTが2024年3月に商用開始した『tsuzumi』という大規模言語モデルの特徴の1つは、ChatGPTなどに比べて消費電力が非常に小さい点です。当社でもNTTのパートナーの1社として、このtsuzumiを活用するため、企業が保有するプライベートなデータと生成AIをかけ合わせる領域での検討を開始しています。先端テクノロジーの活用がエネルギー問題にも影響し、地政学リスクもある中で、省電力型の技術は今後注目されていくでしょう」