【EXILE CUP 2024 レポート】“自由なプレー”で暴れ回ったF.S.オーガがハイレベルな関東大会を制覇!…EXILE CUP 2024 関東大会
ルパン、テキーラ、味噌汁……およそフットサルには似つかわしくない言葉が飛び交う、異色のチームが全国大会への切符を手に入れた。 去る6月16日、小学4年生から6年生を対象としたフットサル大会「EXILE CUP 2024」の関東大会がコーエィ前橋フットボールセンターで行われた。12回目の開催となる今大会の関東大会には、昨年を上回る56チームが参加。全国9地区10会場で予選大会が行われ、優勝した計10チームが愛媛県今治市で行われる決勝大会に進む。 この日はLDH JAPANからゲストとしてラモス瑠偉さん、EXILE / EXILE THE SECONDの橘ケンチさん、WOLF HOWL HARMONYのRYOJIさん、SUZUKIさん、GHEEさん、HIROTOさん、RAG POUNDのBaby Twiggz "SHUN"さんが登場。開会式では橘ケンチさんが「勝っても負けても相手選手のことを称えて、チームメイトに感謝して、自分の成長につながる機会になってくれたらうれしいです」、ラモス瑠偉さんが「勝利にこだわることも大事ですけど、マナーはもっと大事。楽しむことも忘れずに、やりたいプレーを全力で見せてください」と声を掛けた。 続いてEXILE TETSUYAさん監修のもと日本サッカー協会が開発した「クラッキ!ダンス」でウォーミングアップ。音楽に合わせて体をほぐし、第1試合に向けて準備を進める。予選リーグは4チームずつ14ブロックに分かれた総当たり方式。各ブロック上位1チーム、および2位の中で成績上位の2チームの計16チームが決勝トーナメントに進出する。 予選リーグで目を引いたのはF.S.オーガ(市川市)や高崎西FC(高崎市)。各選手のクオリティーが高く、1対1の勝負から優位な状況を作り出していくチームだ。対照的に、Ambrogio FC(浦安市)やフウガドールすみだエッグス(東京都墨田区)は選手の配置を意識してよりフットサルらしく勝負していくチーム。バスケットボールのようなスクリーンも駆使し、後方からチャンスを作り出す姿は小学生とは思えない緻密さだった。 また、女子だけで構成されたエストレーラFC境クリアンサ(伊勢崎市)とファナティコス(高崎市/前橋市)も存在感を放っていた。エストレーラFC境クリアンサは「男子に気を使わないでのびのびプレーできる環境を作りたかった」という大熊周治監督が2007年に設立したチーム。県内でも異色の“女子専門”を貫いている。男子相手に果敢に挑んでいき、3戦目では完封での初勝利も達成。得点を奪った堀結菜さんは「男子は体が強くて大変だったけど、足技では自分が勝っていたところもありました」と手応えを得たようだ。 県大会3連覇中のファナティコスも男子チームから1勝をもぎ取った。キャプテンの松本ゆずかさんは「去年の全国大会では男の子みたいに強いチームがいました。今年は優勝を狙うので、いい経験になりました」と大会を振り返る。「男子の強度やスピードを肌で感じることが大事」という池田稔樹監督の狙いどおり、全国大会に向けて大きな経験を積み重ねた。 白熱の予選リーグを終えると、束の間の休息を挟んで抽選会、そして決勝トーナメント1回戦へと移っていく。トーナメント表の左の山には高崎西FCやフウガドールすみだエッグスが入り、拮抗した試合が続いた。テクニシャンをそろえる高崎西FCは0-1でcrasse A(鶴ヶ島市)に敗れて1回戦で姿を消す。フウガドールすみだエッグスは1回戦こそ快勝を収めたが、準々決勝と準決勝は規定の時間で決着がつかず、PK戦の末に決勝進出を果たした。 もう一方の山では、F.S.オーガとAmbrogio FCの実力が明らかに抜けていた。両者は決勝トーナメントで一つの失点も許すことなく勝ち上がり、準決勝で激突。これまでにない緊張感が漂うなか、立ち上がりはお互いに出方をうかがう固い展開となった。 Ambrogio FCがセットオフェンスから丁寧に攻め込むが、球際で優位に立つF.S.オーガの前にシュートを阻まれる。ようやく試合が動いたのは後半だった。ポニーテールをなびかせるF.S.オーガの10番、水上零仁くんがゴール前の混戦から強烈なシュートを突き刺した。さらに相手が前掛かりになったところから、ショートカウンターで追加点。Ambrogio FCはゴール前の正確さを欠き、そのまま試合終了のホイッスルが鳴った。 試合に敗れたAmbrogio FCは、リバプールFCアカデミーの日本支部でコーチを務めていたハスケル・ジーノ監督らが立ち上げたチーム。技術やフィジカル一辺倒になりたくないという思いから「頭で勝つ」スタイルを掲げている。実際、大会で見せたプレーは小学生とは思えない精度だったが、ジーノ監督は「苦しい場面で弱さが露わになってしまった。課題を突きつけられた大会になった」と振り返った。 フウガドールすみだエッグスとF.S.オーガによる決勝戦は波乱の幕開けとなった。キックオフの流れから、F.S.オーガの水上くんが放ったロングシュートがそのままゴールへ。「狙っていた」というプレーで一気に流れをつかむと、立て続けにゴールを奪って4-0で前半を終える。 フウガドールすみだエッグスは出鼻をくじかれた格好となったが、ハーフタイムできっちり修正。後半から見違えるようにプレスが機能するようになり、狙いどおりにボールを奪ったところからカウンター攻撃で1点を返す。しかし、再びF.S.オーガに流れを引き寄せたのが水上くんだった。ゲストのラモス瑠偉さんが「ウォーミングアップから違いを感じていた」と評したテクニシャンが華麗なループシュートでゴール。フウガドールすみだエッグスは終盤に1点を返して意地を見せたが、5-2でF.S.オーガが関東大会を制した。 F.S.オーガを最後尾から大声で統率した菊池優太くんは「全員に個人戦術のベースがあるから自分で考えてプレーできる」と勝因を分析。「みんなが頑張ってくれて良かったです。全員で勝った大会でした」と仲間をねぎらった。大会を通じてハイパフォーマンスを見せた水上くんは「準決勝でパスミスが多かったのが悔しい。将来は(ルカ)モドリッチや(アンドレス)イニエスタみたいに、世界一の選手になりたい」と語ってくれた。 優勝したF.S.オーガは1試合目から異質なチームだった。とにかく明るく、試合中は「ルパン! ルパン!」と不思議な掛け声が響く。サイドからの折り返しにファーで合わせることを「ルパン」と呼んでいるのだ。総監督の田中学さんが掲げるのは「指導しない指導法」。名誉顧問を務める石戸智則さんは「指導ではなくファシリテーション。僕らの役割は楽しくプレーできる場を作ること」だと解説する。「ファー詰めと言っても子どもたちには響かない。それを必殺技のように『ルパン』と名付けると面白がってやってくれるようになるんです」 試合中もコーチングはほとんどなく、むしろ子どもたちと一緒に「ルパンいけー!」と楽しんでいる様子だった。「この年代はコーチに言われて萎縮してしまい、もっとできるのにプレーが制限されて力を出せない子が多い。それを極力なくして、できるだけ自由にやらせたい」という田中総監督の思いがチーム作りに反映されている。 F.S.オーガのメンバーはそれぞれのサッカーチームと掛け持ちで参加しており、大会に合わせて募集を掛け、集まった選手たちで戦う。今大会ではこの日初めて会った子もいたそうだ。今後の課題はEXILE CUPの決勝大会で同じメンバーを集められるかどうかだ、と田中さんは笑って話す。 表彰式では橘ケンチさんらアーティストが表彰状を、ラモス瑠偉さんがトロフィーを贈り、各チームをたたえた。大会を通じて多くの子どもたちと交流した橘ケンチさんは「ハラハラしながらも、ボールを追いかける姿に元気をもらいました」と振り返り、「EXILE CUPに出場した選手がJリーグクラブのアカデミーに入ったという話も聞きました。今日ここにいた子がプロになる日も遠くないかもしれないですね。今後、大会がさらに認知されて、EXILE CUPを中心とした町おこしにつなげていけたら」と展望を語った。 ラモス瑠偉さんは「お世辞抜きに、これまでに参加した大会で一番上手な選手が多かったです」とレベルの高さに驚いた様子。「将来性のある選手がたくさんいました。そういう空間に自分もいられて幸せでした」と笑顔で振り返った。 F.S.オーガの次なる舞台は9月の決勝大会。最後まで戦い抜いた5人は、口をそろえて「絶対に優勝したい」と意気込む。嵐のように関東大会を制したF.S.オーガが、全国の舞台でさらに大きな旋風を巻き起こしてくれるか、大いに期待して見守りたい。 取材・文=小杉 正貴 写真=千葉 格
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