札幌五輪のレガシー2施設が引退へ スケート場、ジャンプ台を新設
1972年札幌冬季五輪の舞台となった二つのスポーツ施設が引退の時期を迎えようとしている。美香保体育館(札幌市東区)と宮の森ジャンプ競技場(同中央区)について、札幌市は老朽化などを理由に新たな後継施設を建設する方針だ。 【写真】札幌五輪の女子フィギュア(規定)が行われた「美香保屋内スケート競技場」(当時の名称)で演技するジャネット・リン(米) 美香保体育館は札幌五輪のフィギュアスケート(規定演技)が行われ、女子シングル銅メダリストのジャネット・リン(米)らが舞ったリンクとして知られる。ただ、「完成から半世紀以上がたち、建物自体の老朽化が激しい」(市スポーツ局)。市は直線距離で約3キロ離れた全天候型の多目的施設「つどーむ」(東区)の敷地内に、新たなリンクとカーリング場を建設することを決めた。事業費は約93億円で、2030年度の開業をめざしている。 美香保体育館のリンクは冬季限定でスケートとカーリングの兼用だった。近年はカーリング人気の高まりで「どうぎんカーリングスタジアム」(豊平区)の利用希望者が定員の20倍を超えることもあり、通年で利用できる施設の拡充を望む声が上がっていた。 市スポーツ局によると、新施設にはフィギュア、ショートトラックなどの競技が可能な国際規格のリンク(60メートル×30メートル、観客席約300席)とカーリング用リンク(5シート、同200席)をそれぞれ造り、通年利用が可能になる。美香保体育館は、新施設の開業後に解体し、跡地利用は今後検討していくという。 一方の宮の森ジャンプ競技場は70年に完成し、札幌五輪では70メートル級(現ノーマルヒル)の会場となった。「日の丸飛行隊」と呼ばれた笠谷幸生、金野昭次、青地清二の3選手が表彰台を独占した「聖地」として知られる。 ただ、ラージヒルの大倉山ジャンプ競技場とは約2キロ離れており、競技運営や選手育成、維持コストの面で施設の一体化が以前からの課題だった。 ノーマルヒルの新ジャンプ台は大倉山のラージヒル台の北側(向かって右隣)に建設する予定。国内で、ノーマルとラージを併設するジャンプ場は長野五輪で使われた白馬にしかなく、競技団体も併設を求めていた。招致を断念した30年札幌五輪の計画段階の試算では、事業費は約90億円だった。 大倉山は北海道観光の人気スポットとして定着し、年間約40万人が訪れる。リフトに代わる移動手段としてバリアフリー対応のゴンドラの設置も検討しているという。秋元克広市長は「具体的な検討はこれからになるが、25年度予算で何らかの反映はさせたい。ノーマルヒルとの併設で(大倉山は)観光施設としてもさらに有効活用できる」と期待を込める。(原知恵子、畑中謙一郎)
朝日新聞社