「macぶっこわしとく」会社への“不適切チャット”発覚、促され自主退職も一転…「取り消し」求める従業員に裁判所の判断は
裁判所の判断
会社の勝訴である。裁判所は「真意に基づいて退職の意思表示をしたものと認めることができる」旨言い渡した。 X1さんは「家族と面談する機会も与えられず、面談の時間も30分にとどまった」と反論したが、裁判所は「Xさん自身、納得がいかなければ退職届を提出する必要はないことを知っていたのであるから、上記事情をもって真意に基づかないということはできない」と判断。 X2さんは「係長から『懲戒解雇になる』旨告げられた」と反論したが、裁判所は「係長がそのような発言をしたと認定することはできない」と結論付けた(係長は「懲戒処分を受ける可能性がある」とは述べたものの、その一種である「懲戒解雇」になるとは言っていなかった)。 「強迫された」という両名の主張についても、裁判所は「そのような事実は認められない」と判断した。 このように、いったん退職届を出してしまうと取り消しは非常に難しいので要注意だ。
ほかの裁判例
■ 社員の負け 「退職させていただきます」と口頭で述べた場合、退職の意思表示にあたるか? が争われた事件がある。地裁は「退職は成立していない」と判断したが、高裁は「いや、退職は成立してる」と判断した。(札幌高裁 R4.3.8) ■ 社員の勝ち 会社が社員に「懲戒解雇になるかもよ? 自主退職したほうがいいんじゃない?」などと迫ったとして、裁判になった事件もある。社員は懲戒解雇を避けるために退職届を提出して自主退職したが、納得できず訴訟を提起。裁判所は「自主退職は無効! 懲戒解雇できないケースなのに、それをちらつかせて自主退職を迫っていたからね。当該の社員に過去の給料と夏のボーナス、冬のボーナス、あわせて数百万円を払え」と命じた。(東京地裁 H23.3.30) 会社が強迫などを行って退職届を提出させた場合、社員には勝てる可能性があるが、かなりのレアケースだ。退職届を提出すると“ほぼ勝てない”ということを押さえていただければ幸いである。 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡