名門レアルと契約もBチームでプレーする久保建英の選択は正しかったのか?
過去の例を見れば、ゴエスも最初はカスティージャからキャリアをスタートさせるだろう。弱肉強食が掟のプロの世界で、なおかつトップチームへと昇格できる扉が限られ、そのトップチームは毎年のように大物を獲得する。競争を含めて世界一のレベルにある、そういう名門クラブに久保は挑戦することになるのだ。 たとえレアル・マドリードの一員になっても、プレーする舞台が3部リーグであることに首を傾げられるかもしれない。出場機会を優先させてまず中堅クラブを選ぶことや、あるいはFC東京で1年間を通して主力を担い、優勝を勝ち取る過程を経験すべきでは、という声も決して小さくはないだろう。 しかし、久保はあえてチャレンジする道を選んだ。ポジションを含めて、何ひとつ約束されていない新天地へ飛び込むことが、さらなる成長につながると判断した。森保ジャパンに招集されている間に迎えた、18歳の誕生日に取材に応じた久保は将来を見越すような、こんな言葉を残している。 「ひとつ年を取った、という言い方は変ですけど、これからはもうジュニアと書かれることはなくなりますし、世界でも18歳はもう若くはない、みたいな感じになってきている。18歳でも試合に出る選手は出ますし、だからと言って22、23歳になったときに約束されていることは何もないので」 J1での傑出したパフォーマンスを介して、心技体に大きな自信を得たいまだからこそあえて高みを目指す。ヴィニシウスもゴエスも、ブラジルで保証された居場所をかなぐり捨てて、成功をもぎ取るために世界最高峰の舞台に挑む。同じ土俵に上がらないことには、目指す目標にはたどり着かない。 「サッカー選手として大きな存在であり続けたい。久保選手がやっているからサッカーを始めましたと言ってもらえるような選手に、より大きな形で影響を周囲に与えられるような選手に、ひと言で表現すれば『すごい選手』になることを僕はずっと目標にしてきました」 将来の夢を聞かれたときに、久保は「何かもやもやした表現ですみません」と断りを入れたうえで、こんな未来像を描いている。バルセロナの下部組織時代に身につけたスペイン語は、いまも色褪せていない。日本人にとってハードルとなる言葉の壁がないだけに、何の不安もなく飛び込めるだろう。 地元メディアでは、カスティージャの新監督にはスペイン代表としても一時代を築いた名ストライカー、ラウル・ゴンザレス氏が就任すると報じられている。トップチームのジダン監督を含めた2人のレジェンドのもとで、歴代2位の若さとなる18歳5日でフル代表デビューを果たしたばかりの逸材が、さらに「すごい選手」になるための壮大な挑戦が幕を開ける。 (文責・藤江直人/スポーツライター)