深圳の児童刺殺事件から考える中国全土にうっすらと蔓延する反日感情の正体 「透けて見える政府側の意図」
18日朝、中国南部・広東省深圳市の日本人学校に登校中の男子児童(10)が男に刃物で刺され、翌19日に死亡した。容疑者の男の犯行動機は明らかになっていないが、中国の国内事情に通じる人たちからは、「反日感情が背景にあったと考えるのが自然」といった声が聞こえてくる。年々反日感情が高まっているという中国で、今何が起きているのか。 【写真】事件後、学校HPは黒色に… * * * 9月18日は、中国で“国恥日”と呼ばれる、柳条湖事件が起きた日。1年の中で特に反日感情が盛り上がる日に日本人が襲われたことを受け、中国のSNSプラットフォーム「微博(Weibo)」には、日中関係について言及する人々のコメントがずらりと並んでいる。 「愛国だといってこんなことをしたならば、むしろ中国国家をおとしめる行為だ」 「一人の小さな子供に何の罪があるのか。弱者に手を下すなんて卑怯者としか言いようがない」 容疑者を強く非難する声が数多くあがる一方で、 「日本人はなぜ100年経っても中国人が激怒しているのか、よく考えてみろ」 「小日本は南京大虐殺で30万人の中国人を殺害したが、いまだに謝罪してない」 などと、歴史問題とからめて日本への憎悪をむき出しにする声も少なくない。 ■小学生が差別的な言葉を口にする 上海出身の妻がいる日本人男性(40代/埼玉県在住)は、事件を受け、妻が中国での反日感情の高まりについてこぼすのを聞いたという。 「妻の地元の友人の子は、小学校の低学年でありながら日本人の子どもへの差別的な言葉を平気で口にするそうです。妻は、『海外との交流が盛んな上海でさえこの有様なのだから、地方都市だとなおさら反日感情が激しいのでは?』と心配している様子でした」
2009年から6年間上海に住んでいたフリーライターの西谷格氏は、中国で暮らす中で激しい敵意を向けられたり、差別に遭ったりという経験は特段ないというが、「反日感情が中国全体にうっすらと蔓延(まんえん)している感覚はあった」と振り返る。 「中国人と仲良くなると、しばしば『お前は南京大虐殺をどう思っているんだ?』などと聞かれます。相手のトーンは、けんか腰だったり興味津々だったりさまざまですが、議論しても平行線でした。というのも、中国のメディアは南京事件が起きた12月13日や盧溝橋事件が起きた7月7日など日中戦争に関連した日には必ず、『歴史を忘れてはいけない』『日本には警戒しましょう』といったメッセージの報道をするんです。そんなニュースに日常的に触れていれば、大なり小なり日本にネガティブな感情を抱くのは当然でしょう」 ■日本人学校がスパイ養成所……? その結果、たびたび不審の眼を向けられていたのが、現地の日本人学校だった。福島第一原発の処理水放出問題で反日ムードが高まった昨年8月には、蘇州や青島など各地の日本人学校に卵や石が投げ込まれた。 西谷氏によると、ネット上には 「日本人学校はスパイを養成している危険な集団」 「いつもカーテンが閉まっていて、何をしているか分からない」 などと不安をあおるような記事や動画があふれているという。反日感情に加え、中国国内に中国人が勝手に入れない空間があることへの違和感が暴走した結果とも捉えられるが、問題はそれらのフェイクニュースが放置されていることだ。西谷氏は言う。