「日本バスケのためを思って…」八村塁が“再び協会批判”ウラに日本代表への特別な想い「それなら来なくていいと切り捨てるのは簡単」
NBAスカウト「世界の潮流とそれほど違うとは思えない」
八村の代表に関する発言のなかではホーバス対八村の対立が論点のひとつだが、今回の囲み取材で、八村はホーバスHCを評価していない理由についても、さらに詳しく語った。 「練習の中身もそうですけど、プロの試合で勝てるやり方ではないなと思いますね。いろんな細かいところがあると思うんですけど、僕が世界でやって見てる中で、全然、世界のレベルの練習のしかたではないですし、ミーティングもそうですし。フィルム(動画によるスカウティング)のやり方も世界レベルじゃないんじゃないかなと思いますね」 ホーバスの戦術に否定的なのか、戦術面以外の問題なのかは、このコメントからはわからない。某NBAチームのスカウトに意見を求めると、ホーバスの戦術が世界の潮流とそれほど違うとは思えないという。5人を外に配置した5アウトから3ポイントを武器とする戦い方は、日本が世界と戦い、少しでも勝つチャンスを上げるためには「あり」な選択だともいう。 ひとつ、八村が「世界と違う」と言った背景として考えられるのは練習の長さだ。最近のNBAチームの練習は以前よりさらに短く、効率よく行う傾向が進んでおり、レギュラーシーズン中の練習時間はフィルムセッションを入れても1時間余ということも普通だと聞く。レイカーズのヘッドコーチ、JJ・レディックも、選手にとって時間がどれだけ大切なのかに気を使い、練習でもいかに短時間で効率よく行うかを配慮していると語っていた。そういったやり方に慣れた八村からすると、代表の練習が効率悪く思えたのだろうか。 シーズンを通して戦うNBAと、短期間の国代表ではやり方が違うのはしかたがないことだ。ただ、NBA選手を加えての練習期間に制限がある以上、今後、代表チームの練習の効率のよさは追求していく必要がある一面だろう。 とはいえ、すでにホーバスとの代表契約は更新され、新ホーバス体制でのロサンゼルス五輪に向けての戦いは始まっている。八村らアメリカで活動する選手たちや、故障を抱える渡邊雄太や馬場雄大など、パリ五輪のメンバーの多くを欠くなか、日本はホームでのモンゴル戦とアウェイでのグアム戦に連勝。これでグループ4勝0敗となり、グループラウンド2試合を残してアジアカップ本戦への出場を決めている。その裏で八村がホーバスHCの批判をしていたのだから、複雑な思いの人が多いのも当然だろう。 一方で、八村の話の肝は、単なるホーバス批判ではない。代表のヘッドコーチが代わらなければ代表に戻れないということなのかと聞かれた八村は、こうも語っている。 「日本の、JBAの組織が変わらないと、それは変わらないです。同じ人たちがずっと上でやってるんで。そういう人たちがずっとやって、世界がどうだかって言ってるのも僕はおかしいんじゃないかなと思うんですね。(協会の上の人たちは)今まで世界に行ってなかったんで、それをいきなり『これが世界のコーチだ、これが世界の誰だ』って言ってるのも僕はおかしいんじゃないかなと思います」 つまり、根本には協会に対する不信感がある。ホーバスHC問題はそのなかのひとつにすぎない。 正直言って、ここまでこじれたら日本代表としての八村を諦めるのが一番簡単だと考えている人も多いだろう。現状、ホーバス体制でロサンゼルス五輪までの戦いを始めた以上は、ここから引き戻してコーチを交代することは簡単ではない。逆に、日本のトッププレイヤーである八村の考えに配慮し、ホーバスを交代させるべきだと考えている人たちもいるかもしれない。しかし、そのどちらを行ったとしても、それだけで日本代表がいい方向に進むわけではない。
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