桑原謙太朗 引退惜別インタビュー 一軍で投げてこそ【惜別球人2021】
輝いたのは2年間だけ、といってもいいだろう。14年間の現役生活は、苦しさの連続だった。それでもマウンドに上がり続けたのは、プロ野球選手として一軍で投げたいという気持ちがあったからこそ。最後は右肩&ヒジは上がらなくなったが、それでも投げ抜いた14年間に悔いはない。 取材・構成=椎屋博幸 写真=宮原和也、BBM 9月25日の甲子園球場。ウエスタン公式戦オリックス戦の9回、現役最後のマウンドに上がった桑原謙太朗だ。最速136キロの真っすぐと120キロ台のスライダーを投げ込んで現役に幕を下ろした。全盛期のようなキレと鋭さはやはりなくなっていた。2018年に右ヒジを痛め、今季は肩にまで痛みが出ていた。その中で自ら現役に終止符を打った。 ──プロ14年間、やり切った感じがありますか? それとももう少しやれたのかな、という思いとどちらでしょう。 桑原 最後のほうは思い切り投げることができなかったですが……なんとか投げ切れたので、やり切ったということになりますね。 ──甲子園での最後の二軍での登板を見ていました。少し右肩が痛いのかなあ、と思いました。 桑原 あれが僕の中では精いっぱいというか1人にだけ投げたので、まだましな投球だったかな、と思います。その前の登板がまったくダメだったので、最後としては、いいほうだと理解しています。最後はヒジも肩も痛くて、でも、どちらかと言えば肩でしたね。この1年間は特にそうですね。 ──今季は開幕一軍に入りましたが、そのときは右肩、ヒジは大丈夫だったのでしょうか。 桑原 そのころは、今季最後のようなきつい状態ではなかったのですが、だましながらやっていた、という表現が一番かもしれません。 ──日常生活では、痛みなどは出ていたのでしょうか。 桑原 日常生活で痛いことは痛いですが、生活に支障が出るほどではないです。やはりピッチングをしているときが一番痛いし、キャッチボールのときも痛いですね。ただ、試合で投げるときは、不思議と痛みは感じないんです。その代わり腕全体に力が入らない感じになっていました。 ──痛みが増していくごとに野球が楽しくなくなっていったということはありますか。 桑原 これが職業なので楽しい、ということはないですが、痛みがドンドン増していくごとに“つらさ”も増していくという感じでした。パフォーマンスのほうも上がらないですしね。本当は続けたいという気持ちはあったんですが、二軍でも投げられずに終わりましたからね。 ──8月28日に行われた独立リーグ・徳島との試合で投げて、引退を決意したとうかがっています。 桑原 実は、その前から引退を決めていました。肩が痛くて投げられないと二軍の安藤(安藤優也投手コーチ)さんに伝えたんですよね。そこで最後に独立リーグとの試合で投げるか、という打診をもらって、投げさせていただいたという感じです。だから、あそこで引退を決めたというわけではなかったですね。でも・・・
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週刊ベースボール