【上原浩治】広島森下暢仁“落とし穴”にはまって3失点…この時期一番警戒しなければいけない「敵」
<広島3-5巨人>◇9日◇マツダスタジアム この時期のピッチャーには、相手チームの打線より警戒しなければいけない“敵”がいる。それは猛烈な「蒸し暑さ」だ。暑さで奪われるのは体力だけではない。むしろ体力より、一番ダメージを負うのは「集中力」。広島の先発・森下は、今試合まで防御率1・41、被本塁打1本だけだったが、蒸し暑さの“落とし穴”にはまった。 【写真】高めに浮いたフォークを逆方向に放つ岡本和真 リズムを崩しやすいパターンにはまったのは、3回裏だった。1死一塁で森下に打席が回ってきた。送りバントかと思ったが、打撃のいい森下だけに、広島ベンチは強攻策をとった。1ストライクから打って出て森下の打球はショートへ転がった。これを泉口がエラーし、森下は一塁を駆け抜けてチャンスは広がった。秋山の犠牲フライで1点を先取したが、続く矢野もライト前ヒット。森下は二塁に進んだあと、チェンジになった。 私自身、経験があるが、チェンジでベンチに帰っても休む時間はない。屈伸などをしてひと呼吸置けばいいのだが、そのままの流れでマウンドにいくと、どうしても体に疲労感が残ってしまう。そのままいつものような感覚で投げてしまうと、自分のピッチングができなくなる。 4回表の巨人は1番から始まる打順だった。森下も注意しなければいけないイニングなのは分かっていただろう。しかし1死後、吉川に対して2ストライクに追い込んだあと、外角低めのチェンジアップをセンター前にポテンヒットされ、ヘルナンデスにもカウント2-2から外角低めのカットボールをライト前に打たれた。どちらも厳しいコースで失投ではないが、もう少し低めか外に投げられていれば空振りを奪えたかもしれない。そして岡本和には1ボールから高めに浮いたフォークを3ランされた。 こういったケース、私はギアをマックスに上げ、全力で抑えにいった。どうしても制球が甘くなるし、無意識で早く抑えてベンチに帰って休みたいという意識が働くからだ。そういう意識がないと、今回の森下のように勝負を急いでちょっとだけ甘くなったり、思わぬ失投につながるケースがあるからだ。森下が失点したのは、このイニングだけだし、それ以外にヒットを打たれたのも1本だけ。防御率1点台で被本塁打も1本だけの投手だけに、もったいないイニングになった。味方打線が追いつき、森下に負けは付かなかったが、悔しい3失点だった。 6月下旬あたりから、急激に暑くなり、8月まではピッチャーにとって苦しい季節になってくる。この季節を乗り切るには、毎日の食事に気をつけて、投げない日はしっかり走り込んで暑さに負けないような調整を心がけること。そうすれば、集中力も途切れにくくなる。夏場に勝てる投手の存在が、優勝争いのカギを握ると思う。(日刊スポーツ評論家)