【引き渡し直前でマンション解体へ】「富士山眺望」巡る騒動、「景観」の価値とどう向き合うか
いずれの研究も都市郊外の住宅価格に注目しているが、前者では木々が見えることは好ましい景観と評価され、後者では森林が見えることが好ましくない景観と評価されている。いずれも木が見えていることに違いはないが、分析対象の立地の特性、住民の文化的背景によりその評価が異なっているのである。
地域住民が持つ価値観把握を
このように、同じものが見えてもその評価がさまざまでありうるため、景観の保全への政策も全国一律というわけにはいかない。場所と住民の価値観をきめ細やかに把握し、適切な規制や都市開発の在り方を模索する必要がある。 そのため、現在のように景観法で、各自治体が独自の景観条例や景観計画を策定するための法的根拠を整備し、実際の規制は各自治体に委ねるという方式は理にかなっている。よりよい居住環境の整備のため、地域の実情を定量分析により客観的に把握して、規制をきめ細やかに定めていくことが望まれる。 今回の国立市の事例は、地域住民の居住環境への価値観を企業や行政が共有する重要性を教えてくれた事例とも言えるかもしれない。
佐藤泰裕