マルケスの来季ドゥカティワークス入りに伴う“玉突き移籍”で改めて露呈したホンダ、ヤマハの求心力低下…中上、小椋は来季どうする?
シーズンも中盤戦となり、MotoGPクラスではライダーたちの来季の移籍交渉が山場を迎えている。その移籍交渉でもっとも注目されたのが、ナンバー1チームのドゥカティワークスだった。すでにディフェンディングチャンピオンのフランチェスコ・バニャイアの残留は決まっていたが、そのチームメートはマルク・マルケスに決まった。ドゥカティはふたりのチャンピオンを起用することになる。 【最新写真満載】“乗れてる感”あふれる今季のマルケスと全盛時を思わせる明るいパフォーマンス、珍しい短髪とスペシャルカラーのヘルメット、マルケスを好きすぎて泣いちゃう少年などを写真で見る これを受けてドゥカティワークス残留の可能性が消滅したエネア・バスティアニーニは、KTMのサテライトチームのレッドブル・GASGAS・テック3へ移籍。ドゥカティのナンバー2チーム、プラマック・レーシングからドゥカティワークス入りを強く希望していたホルヘ・マルティンは、マルケスとのシート争奪戦に敗れたことからドゥカティを離れ、アプリリアワークスに行くことが決まった。 その結果、アプリリアワークス残留と言われていたマーベリック・ビニャーレスは、アプリリアワークスを出て、KTMのサテライトチーム、レッドブル・GASGAS・テック3でバスティアニーニのチームメートに収まることが決まった。ナンバー1の座がマルティンに代わり、待遇面でも差をつけられたことでプライドが揺らいだのが理由だと言われている。 この一連の動きは、6月上旬に行われた第7戦イタリアGPが終わってからわずか1週間ほどの出来事であり、ドゥカティワークスのシートが決まったことで、その結果待ちだったトップライダーたちの行き先がバタバタと決まった。
いまだ不透明な日本メーカーの陣容
そのなかで明らかになったのは移籍先の人気度だった。当然のことだが、コンストラクターで断トツの強さを見せるドゥカティ、そのドゥカティを追撃するKTMとアプリリアのヨーロッパの3メーカーにトップライダーたちの人気は集中した。 すでに2チーム4人すべてが決まったKTMのライダーの顔ぶれは、2017年にMotoGPクラスに参戦してから過去最強の布陣となった。次なるセカンドグループのシート争奪戦も、ドゥカティとアプリリアのサテライトチームから決まっていくことが予想される。 日本メーカーのヤマハは、現在コンストラクターでは5メーカー中4位。元チャンピオンでエースのファビオ・クアルタラロの契約更改にこぎつけたが、もうひとりは未定だ。今季加入のアレックス・リンスは契約更改を希望しているが、22年を最後にサテライトチームのないヤマハは従来の2チーム体制に戻そうと動いており、その結果待ちという状況となっている。ヤマハは現在、ドゥカティナンバー2チームのプラマックとの契約を目指していて、その結果次第でライダー市場にも大きな変化が生まれることになる。 そして最下位のホンダは、ワークスチームに今季加入したルカ・マリーニの契約がもう1年残っている。だが、今年で契約が切れる元チャンピオンのジョアン・ミルが果たしてホンダと契約更改するのかどうか、しなかったとしたらどこへ移籍するのかに注目が集まっている。現状、残っているライダーの顔ぶれを見ても、ミルのキープは復活を目指すホンダにとっては重要課題だ。実力ではヤマハのクアルタラロと並ぶライダーであり、ホンダは金銭面でも最大限の条件を提示して引き留め工作を行うのではないだろうか。 日本のファンにとって最大の関心事は、現在、出光のサポートを受けるIDEMITSU Honda LCRに誰が乗るのかだろう。7年目のシーズンを戦う中上貴晶は32歳。もっぱら今年が最後のシーズンと言われているが、第7戦イタリアGPを終えた時点で中上は「来季についてはオランダGP、ドイツGPの2連戦でホンダと話し合いたい」と語っている。低迷するホンダ勢の中で奮闘する中上をホンダ陣営がどう評価するのか。「年齢的にもいろいろと決断の時」とする中上の来季に注目が集まる。 その後継者には、MTヘルメット・MSIからMoto2クラスに出場する小椋藍とホンダチームアジアからMoto2クラスに参戦するソムキアット・チャントラの名前が挙がる。小椋は2年前にホンダにMotoGP参戦を打診されたとき、「いま決めろと言われたら、Moto2タイトル獲得を目指したい」と辞退。打診が7月だったこともあって断ったのだが、今年も同じ状況となっている。 小椋が希望すればMotoGP昇格は確実だが、Moto2タイトル獲得に引き続き意欲を見せるだけに、これからの小椋の決断が注目される。小椋が辞退すれば「タイ人初のMotoGPクラス」の期待が膨らむチャントラの可能性が一段と大きくなるが、この出光枠のシートについてもオランダGP、ドイツGPの2連戦で大きく前進することが予想される。
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