米軍が戦闘任務終了 アフガニスタンの今後は大丈夫か? 放送大学教授・高橋和夫
2014年12月28日に米軍を主力とする北大西洋条約機構軍がアフガニスタンでの戦闘任務の終結を宣言しました。今後、米軍などはアフガニスタン軍の訓練とアルカイダ(アルカーイダ)の掃討のみを担当し、タレバン(ターリバン)との戦闘から手を引きます。 これによって2001年10月以来の戦争が、アメリカなどの諸国にとっては終わりました。これはアメリカにとっては13年にわたる史上最長の戦争でした。
13年にわたる史上最長の戦争
そもそもアメリカがアフガニスタンに介入したのは2001年9月のニューヨークなどでの同時多発テロを受けたからでした。テロを実行したアルカイダという組織をアフガニスタンのタレバン政権が保護しているというのが、アメリカのアフガニスタン攻撃の理由でした。テロの翌月の10月にアメリカ軍が攻撃を開始し、年末までにはタレバン政権を崩壊させました。 しかし、その後の2003年にアメリカがイラクで戦争を始め、アフガニスタンから力を抜いたために、その隙にタレバンは勢力を復活させました。 おおまかに言ってアフガニスタンの北部をアメリカなどが支援するアフガニスタンの中央政府が、そして南部をタレバンが支配する状況が続いてきました。2009年にオバマがアメリカの大統領に就任し、一時的にアフガニスタンに兵力を増派しましたが、この構図は基本的に変わっていません。
国境線をめぐる歴史的な不信感
問題の一つはアフガニスタン中央政府の汚職です。なかなか効率的な統治が実現されていません。また中央政府内部の亀裂が、もう一つの問題です。その背景にパシュトゥーン人やタジク人などの民族的な対立が存在します。これに対してタレバンは首都カブールなどでのテロ攻勢で政府を揺さぶっています。 アフガニスタン政府にとって治安の維持が難しいのは、いくらタレバンを攻撃してもパキスタン側に逃れてしまうからです。アフガニスタンの治安の安定には、したがってパキスタンの協力が不可欠です。 しかしながらアフガニスタンとパキスタンの間には、歴史的な不信感が存在します。現在の両国の国境線は「デュランド線」として知られています。これは19世紀末に現在のパキスタンを含むインド亜大陸を支配していたイギリスの外交官のデュランドが引いたものです。この線がパシュトゥーン人の伝統的な生活圏を二分しています。そのためアフガニスタンのパシュトゥーン人は、この国境線を正式には認めていません。それゆえパキスタンはアフガニスタンの領土的な野心を疑っています。 またアフガニスタンは、タレバンを背後からパキスタンが操っていると信じています。パキスタンが、アフガニスタンに影響力を行使するテコとしてタレバンを利用していると見ているわけです。こうした相互の不信がアフガニスタンとパキスタンの協力を妨げてきました。