「出られない選手が数え切れないぐらいいる。その思いも背負って」

試合終了直後、主将の松田（４番）を励ます酒井（１番）。写真：窪田亮

［高校選手権１回戦］山形明正（山形）０－４ 米子北（鳥取）／12月29日／埼スタ 　12月29日、第102回選手権の１回戦で山形明正は米子北と対戦。前半14分に先制点を許すと、同18分にも失点。後半にも２点を奪われ、０－４で完敗した。 【PHOTO】“選手権”から日本代表へ羽ばたいたヒーローたち！ 当時の秘蔵ショットで振り返る！ 　悔しい結果に終わった一戦で、４失点もビッグセーブを連発してスタンドの観客を沸かせたのがGK酒井淳平だ。後半29分の１対１の場面では強烈なシュートを右手一本で弾き出すなど、点差が開いてからも集中力を切らさなかった。 　最後まで必死にゴールを守った。チームメイトのFW仲村渠健は「キーパーの酒井君がいなかったら、０－10とか、いっていたと思います」と振り返る。 　その健闘ぶりを称えられた守護神に試合の感想を尋ねると、自身のミスが先制点の献上につながった点を反省して「大きい舞台で１個ミスをすると、全部持っていかれると実感しました。とにかく悔しいです。自分の実力のなさが出ました」と唇を噛みしめる。 　仲村渠のコメントを伝えると、この一戦に強い決意を持って臨んだと明かした。 「大会に出るのは簡単ではないですし、出られる選手は限られています。結果的に０－４になりましたけど、最後まで戦う部分を全面に出したので、ああいうセーブができたのかなと思います。 　メンバー入りできなかったり、試合に出られない３年生がいます。また、明正だけではなく、全国にある3000校以上のチームにも、出たいと思っていても、出られない選手がたくさん、数え切れないぐらいいるので。その選手たちの思いも背負って、この大会にかけていたので。人生をかける、命がけというくらい、本当に全部をかけていました」 　試合終了直後には、なかなか立ち上がれなかった主将のDF松田海生に寄り添い、励ましていた。「顔を上げろ、胸を張って帰ろう」と声をかけたという酒井は、大切な仲間との絆を語った。 「海生とは中学校から一緒で、一緒に山形に来て、２年生から一緒に試合に出て、キャプテンと副キャプテンの立場で、お互いに辛い思いを分かり合ってる仲なので。海生との仲は特別だと思います」 　高校卒業後は、地元の千葉県にある明海大に進学してサッカーを続ける。「全国一、日本一、頂点、てっぺんを取ることを目標にしてサッカーをやっています。今回は達成できなかったですけど、大学は４年間あるので、１年生からスタメンを取って、全国大会に出て優勝したいです」と意気込んだ。 取材・文●野口一郎（サッカーダイジェストWeb編集部）