授業でも校務でも生成AIは新しい仲間――ICT活用教育の最新トレンド
文部科学省は初等中等教育の生成AIガイドライン*公表に合わせ、パイロット校を選定。37自治体の52校が授業と校務で生成AI活用を実践した。ここでは全国のさまざまな事例を紹介する。 【図版】実践事例を写真で見る *「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」 授業での活用から見ていこう。前述のガイドラインにおいて、授業での生成AI活用方法として図のような7つの類型が示された。このうち「1」と「2」は生成AI自体について学ぶ、いわば準備段階の活動であり、授業内での活用は「3」から「5」の類型が一般的だ。例えば、グループ活動で議論を深めるために生成AIを使ったり、英会話の相手にしたりする。 早くからICT活用教育を推進し、生成AIも積極的に取り入れている茨城県つくば市は、市立の4校がパイロット校に選ばれた。そのうちの一つ、学園の森義務教育学校では英語、国語、社会など各教科の授業で生成AIを利用した。8年生(中学2年)の国語では、リンクマップを作りながらグループで話し合い、課題を検討する活動の中で生成AIを用いた。グループごとに、「学校での服装を自由化したらどうなるか」「持ち物の制限をなくしたらどうなるか」といった課題を設定し、生徒たちが意見を出していく。意見が出尽くして結論を出すタイミングで、生成AIにアドバイスを求める。膨大な情報を学習した生成AIは、子供たちの視点にはなかった見方や情報を示してくれる。生徒はそれを足掛かりに議論してリンクマップに取り込む。 こうした様子を見ていると、あたかもグループのメンバーが1人増えたかのようだ。数人では議論が行き詰まりがちだが、そこにAIが加わることで多様性が増す。それまでは気が付かなかった視点を提供してくれることもある。いわゆる“壁打ち”に近い使い方だが、グループ学習に取り入れることで議論の深まりが期待できる。
AIに役割を与えて演じさせる
同じく8年生(中学2年)の英語は、生成AIとプログラミングを組み合わせ、ロボットと生徒がディベートするという野心的な授業だ。生徒たちが会話するロボットはプログラミングされた「Pepper」のグラフィックス。「ChatGPT」(OpenAI)の機能を利用して英会話ができ、プログラムで速度や回答方法などを変更できる。初めは生徒の興味に応じたやり取りをして、後半では設定したテーマでAIロボットとのディベートに挑戦した。 生成AIは、役割を与えることで、それに即した応答をするようになる。例えば、この授業でAIロボットの設定を「若い米国人」などに変えれば、異なる立場の人とも会話できる。「子供」に設定すると、易しい言葉で答える。ディベートのテーマについては、生徒が賛成の立場を取ると、反対にAIロボットは生徒の意見に反論するように設定してある。こうした体験を通じて、英会話だけでなく、生成AIに入力する質問や命令、与える役割といったプロンプトによって回答が変化することを学ぶ。