授業でも校務でも生成AIは新しい仲間――ICT活用教育の最新トレンド
行き詰まっても抜け出せる
学習に生成AIを使うと、学習者が自分で考えなくなり、AIに頼って楽をするようになると懸念する声が聞かれる。しかし、東京都の千代田区立九段中等教育学校で主幹教諭を務める須藤祥代氏は、その見方を否定する。情報Ⅰの授業において、Webサイトをデザイン・構築するPBL(課題解決型学習)に生成AIを取り入れた。テキスト生成AIをアイデア出しや文章作成、画像生成AIをサイトの素材作成などに使った。 授業に参加した生徒たちからは、「自分にはなかった新しいアイデアを得られた」といった好意的な声が聞かれたという。須藤氏は、「生徒たちは生成AIで作業が楽になってうれしいわけではなく、異なる視点から助言を得られたことや、作業の効率が格段に上がったことによって思考する時間が生まれ、『一歩進めた』と感じられたことがポジティブな評価につながっている」と分析する。 須藤氏は生成AIの効果を「アイデア出しの際に生成AIがあると、もう一人の仲間がいるような感覚でサポートしてもらえる。生徒が行き詰まったところから抜け出す助けになる」とみる。これは、学園の森義務教育学校のグループ学習を取材した際に感じたことと同じだ。生成AIに頼るのではなく、課題の解決や自分の能力向上のため一緒になって学ぶという新しい学びの形が見えてきた。 とはいえ、その形はおぼろげで、まだ試行錯誤の段階だ。京都市立美術工芸高等学校では、デザイン専攻の2年生が画像生成AIを使うことを前提として、意見広告を制作した。このとき、生徒たちは意図通りの画像を出そうと躍起になり、思った通りに出力されると、そこで満足してしまう傾向があったという。 同校美術工芸科 教諭の西川俊三氏は、「画像生成AIよりも、その前段階として作品の背景となる社会のさまざまな情報を調べたりまとめたりするために使った方がよかったかもしれない。次はそうした取り組みをしてみたい」と話す。こうした試行錯誤は生成AI活用のノウハウになる。広く情報共有してほしい。