「父の日」の影は薄くとも、父の存在感は色あせず 斉藤三恵子さん 柔の道、寄り添う
16日は「父の日」でした。生前の夫がこの日に家にいることはほとんどなかったので、わが家で父の日は影が薄かったかもしれません。でも改めてこういう日を迎えると、その存在は何年経っても色あせないなと思います。 【写真】沖縄の家族旅行で記念写真に納まる斉藤立、兄の一郎さん、父の故仁さん=2014年 次男の立が父と同じ五輪代表という立場になって、2世代分の重圧があるようにも感じます。五輪2大会連続金メダルの父だけに、どうしても比べられることはあります。 1988年ソウル五輪では右膝を痛めて歩くのがやっとの状態で優勝したことを引き合いに「ソウルのときは(重圧は)こんなもんじゃなかった」とか「お父さんはあれだけ頑張っていたし、もっとやれるぞ」とか、周囲の声は立の耳にも入っていて「もっと頑張らなあかん」とも思っていることでしょう。22歳の立にとっては重く、かわいそうに思えることもありますが、これも宿命なのかもしれません。でも、夫はきっと比べることは望んでいなくて「立は立だから」と言ってくれると思います。 父の日の当日は、立は東京に戻らないといけなかったのですが、その前に関西で合宿していたこともあり、(父の遺影に)あいさつに来ることができました。4月から所属しているJESグループの井上智和監督や男子日本代表の鈴木桂治監督、百瀬優コーチも五輪前にということで、手を合わせに来てくださりました。 井上監督からは機を見てアドバイスをいただいているようです。すごく気遣っていただいていて、親しみやすい存在でもあります。最近は男子100キロ超級で活躍した国士舘大OBの岩尾敬太さんもコーチについてくれています。親身になって戦術を考えてくださったり、「選手と一緒になって研究しているのが楽しい」と言ってくださったりしていて、頼もしい限りです。社会人になり、新しく指導してくださる方が増え、柔道の幅も広がっていくと思います。本当にありがたいことです。 4日に国士舘大で報道陣に公開された練習日は、帰宅したときには疲れてくたくたになっていて「食べながら寝そう」というほどでした。午前中は陸上のトレーニングで追い込んで、午後もみっちり乱取りして、充実していたようです。最近は足のステップの踏み方に手応えを感じているようで、着実に自信をつけてきています。 受験で勉強するしかないのと同じように、結局は稽古しかありません。いくらやっても不安は尽きないと思いますが「これだけやったら大丈夫」と思えるものを積み重ねていくしかないのでしょう。オーバーワークにならないようにバランスは難しいところですが、そこは私も一緒に注意してみていたいと思います。