「神様みたいなものを感じた…」當山奈央・6曲の歌詞が6篇のストーリーとなり映画化
◇あの日あの時間でしか撮れなかった画 ――當山さんが海に入るシーンも印象的でした。 當山:これに関しては、台本の段階で「やる!」って決めていたんで、大変というより、やり切るだけって感じだったんです……。 永田:でも、大変だったと思いますよ、撮影は11月だったし、上がったらガクガク震えていたし。 當山:ただ、この撮影に関しては1発で決めないといけない、という気持ちがあったんです。というのも、スケジュール的にその日しかなかったし、光の加減、太陽の動きを考えると、1発で決めないと、その日は撮れなくなっちゃう。多くの人に迷惑をかけてしまうことになるので、そこは気合いが入りました。 永田:あれは、なんか神様みたいなものを感じたというか、何かの助けを感じました。 當山:出来上がったものを見たときに、あまりにも美しくて涙が止まらなくて……本当にすごいなって。 永田:あのシーンは、あの日のあの時間でしか撮れなかった画だからね。 ――『わたしの、途切れない物語。』が大きく広がっていけばいいですね。 永田:本当にそうです。こうして舞台挨拶や取材で感想を聞けるのもとてもありがたいし、さっきも偶然見てくれた知り合いのプロデューサーに「良かったよ」って声をかけてもらいました。個人的には、男性にそう言ってもらえるとホッとしています。じつは、彼女を傷つけたくなくて、言ってなかったんですけど、「これは誰に向けて、どういう気持ちで作ったの?」っていう感想をもらったこともあって。 當山:え、そうなんですね……。 永田:そういう表情になると思ったから(笑)。でも、沖縄国際映画祭に来て、大勢の人に迎えてもらって、全員に好意的な感想をもらって、“ああ本当に良かったな”って。私は映画監督として、映画祭にはパワーがあると思ってますし、先ほどの知り合いのプロデューサーみたいに、たくさんの人に見てもらって、どんどんつながっていくのがうれしいです。 ――男性として、とても響くシーンが多くありました。 永田:そう言っていただけるとありがたいです。じつは、4章目の「ある男」は、私の中でモデルになっている方がいるんです。物語では、彼女への思いを手放せずに新しいスタートを切れないでいるという設定なんですけど、実は、知人は彼女を不慮の事故で亡くしてしまって。その後、周りから「大丈夫?」って気遣われすぎて、“もしかして自分は立ち直っちゃいけないのか?”と身動きできなくなってしまった…そんなエピソードに対する私の思いをあの役には込めたつもりなんです。 大きな絶望を前にしても、意外と小さなきっかけで新しいスタートが切れるものなんじゃないかなって。あのシーンは、特に男性に向けて描いたつもりだったんですが、全体を通して共感してくださる方が多くてうれしいです。 ◇この映画を持って全国を回っていきたい ――では最後に、この作品に込めた想いを順番に聞かせてください。 村川:私は今日、改めてこの映画を見終わったあとに、奈央ちゃんのライブが聞きたい、これで全国を回ってほしいって思いました。 岩井堂:私も映画を見て、言葉に形容できないけど、それぞれ抱えていることってあるんだよなって改めて思いましたし、映画を見たあとに彼女が歌を披露してくださったときに、すぐ近くで聞いていて優しく包まれたような気持ちになったんですね。 今はすぐに答えを求める時代のような気がしているんですが、生きていくなかで答えなんてすぐに出なくてもいいし、生きているだけで一生懸命ってことでいい、と私は思ってるんです。この映画はそう言ってくれてる気がしたし、皆さんも見ていただいて、私のように優しく包まれたような気持ちになってほしいです。 永田:この作品の英題が「Almost 40」ということで、40代の女性の悩みをメインに作り始めているんですけど、彼女が40になったばかりで、私は10年くらい先にいってるんですが、最初にこのアイデアを聞いたとき、“ああ、私もそうだったなあ”と懐かしくなったんです。私は超えてしまったけど、超えたからこそ、こういう人もいたよね、と冷静に見えたのもあって。 なので、渦中の人も、そうじゃない人も、周りから見たら小さなことでも、その人にとっては大事なこともある。その本当に大事なものを見つけて、大切にすることで、もっとこの先の人生が良くなっていくんじゃないかなって。この映画を見て、そう思ってもらえたらと思います。 當山:私は10代から芸能活動をしていて、1999年デビューで25年経つんですけど、これまで言われたことで、一番グサッときたのが「運に恵まれない歌姫」だったんです(笑)。でも、この作品を通してかなり幸せだなって思いました。 こうして、琴さんが自分より女性として先輩で、しかも常にチャレンジしてることとか、近くにいる(岩井堂)聖子とか、(村川)絵梨も、私に刺激をくれる。監督も役者さんも、もちろんプロとして信頼しているから出ていただいたんですけど、友達や先輩に囲まれて良い作品ができたことをうれしく思います。 だから、そういう身近な人たちの何気ない言葉とか存在が、私がこれまで何を言われても歌うことを続けてこれた理由なんだと思ったし、まさか自分自身、40歳になって映画として作品を残せる人生なんて思ってなかったし、しかも明日はレッドカーペットを歩けるなんて! この作品の楽曲もさらにブラッシュアップされてリリースされますし、いろいろな場所をこの映画を携えてライブに行きたいと思ってます。この作品を見て、自分の中の大切なものを見つめ直して大切にしてほしいし、もし一つなくなっても、大切なものはたくさんあるよ、ということを伝えたいです。あと、やはり自分自身の根は大阪人なので、笑いを大切に。ひとつでも多く笑えることがあればいいなと思います。
NewsCrunch編集部