蓮池さんら拉致被害者の帰国から11年……北朝鮮との交渉まとめ
北朝鮮による日本人拉致被害者の蓮池薫さんら5人が帰国して、10月15日で丸11年を迎えました。しかしながら、いまだ拉致問題は解決していません。そもそも、北朝鮮はなぜ日本人を拉致したのでしょうか。また、拉致問題解決に向けて、日本政府はどのような交渉を行ってきたのでしょうか。数十年に及ぶこれまでの動きを振り返ってみましょう。
なぜ北朝鮮は日本人を拉致したのか?
1970~80年代、日本各地で不自然な行方不明者が続出しました。日本当局の捜査や韓国に亡命した北朝鮮工作員の証言によって、これらの事件の多くは北朝鮮による拉致の疑いが濃厚となったのです。さらに、拉致被害者は日本人に限らず、韓国人、中国人、タイ人、シンガポール人など、十数カ国に及ぶといわれています。 北朝鮮がこのような拉致を繰り返した明確な理由は、いまだ明らかになっていません。しかし、歴史的な背景をたどると、日本人の拉致については次のような説があります。 1950年に勃発した朝鮮戦争。開戦から約3年で休戦となりましたが、北朝鮮はその後も韓国を社会主義化し、朝鮮半島の統一を目論んでいました。しかし当時、韓国人をよそおったスパイを送り込むのが難しかったため、日本人を北朝鮮に拉致。その日本人になりすました北朝鮮のスパイを韓国に送り込んだと見られます。拉された日本人の中には、北朝鮮のスパイに日本の習慣や日本語を教える先生になった被害者もいたようです。
電撃的に実現した日朝首脳会談
日本政府は1991年、北朝鮮に対して拉致問題を提起しました。しかし、北朝鮮側はこの事実を否定し続けてきたのです。ところが2002年9月17日、小泉純一郎首相(当時)と故・金正日(キムジョンイル)総書記の第1回日朝首脳会談が電撃的に実現。北朝鮮は当時、日本政府が調査を求めていた被害者13人のうち4人の生存、さらに調査外の1人の拉致を認め、初めて公式に謝罪しました。 同年10月15日には、拉致被害者5人(地村保志さん・富貴惠さん、蓮池薫さん・祐木子さん、曽我ひとみさん)が帰国。それまで拉致を認めてこなかった北朝鮮が態度を変容させた背景には、拉致問題解決によって日本との関係を修復し、経済支援を引き出す狙いがあったといわれています。