蓮池さんら拉致被害者の帰国から11年……北朝鮮との交渉まとめ
一部拉致被害者の帰国が実現。しかし……
無事帰国できた拉致被害者がいる一方、このとき北朝鮮からは、横田めぐみさんを含む8人は死亡、1人は未入国という説明がありました。その証拠として、遺骨や死亡時の情報が日本政府に提示されたのです。ところが、これらを精査したところ、遺骨のDNAが一致しなかったり、情報が一貫性に欠けたりしたため、日本政府はこの説明を信じることはできないと判断。再調査と真相究明を求めました。 これに対し、北朝鮮側は情報提供と遺骨を返還したことで「拉致問題は解決済み」と主張。このまま話し合いは平行線をたどり、現在に至るまで拉致問題の解決は日本側が望む形で進展しない状況が続いています。 しかし、日本からの経済的な支援を必要とする北朝鮮は、これまで日本側に歩み寄る姿勢を見せた時期もありました。2004年5月22日に行われた第2回日朝首脳会談では、北朝鮮は真相究明に向けた調査を白紙の状態から再開することを明言。2008年8月に開かれた日朝実務者協議では、再調査のための委員会の設置を表明し、日本政府による「北朝鮮当局者の入国禁止など一部制裁」を解除することで合意しました。
一筋縄ではいかない日朝間交渉
ところがその翌月、福田康夫首相(当時)の辞任を受け、北朝鮮側は新政権が合意事項の履行についてどのように考えているのか、それを見極めるまでは調査委員会の立ち上げを差し控えると通達してきました。現在まで、この合意は履行されていません。 安倍晋三首相は先月16日、都内で開かれた北朝鮮による拉致問題の解決を求める集会で、「党派を超えてオールジャパンで解決したい」と発言。2002年の第1回日朝首脳会談で官房副長官として同行した当時を振り返り、死亡と伝えられた8人について「死亡時期や理由はでたらめだった」と述べています。 現在、日本政府が認定している拉致被害者は、追加も含めて12件計17人。さらに、民間団体の「特定失踪者問題調査会」は、拉致の可能性を否定できないとする特定失踪者は約700人に上ると主張しています。 拉致発生からすでに35年以上が経過し、帰国を待つ家族の高齢化が進んでいます。節目の日に世論の関心が高まり、問題解決に向けて前進することが期待されます。 (南澤悠佳/ノオト)