「ビルのオーナーなのになぜ交通誘導員の仕事を…」78歳シニア誘導員が驚いた、工事現場で懸命に働く「謎のお金持ち」
裕福なシニアが働いている
このように苦労が絶えない仕事で離職者が多いからなのか、交通誘導員の採用の間口はかなり広い。そのため現場で働くシニアのバックグラウンドも実に様々だ。 もともとは建設会社社長だった80代の同僚の話はいまでも印象に残っているという。 「一族経営の小さな企業ながら事業もうまくいっていて、昔は400坪くらいの豪邸に住んでいたそうです。ただ、取引がスムーズに進むと踏んだのか、はたまた泣きつかれたのか、あるとき3億円の借金の連帯保証人になってしまった。 あとはお決まりのストーリーですよね。借りていた人間が自殺し、この人が借金を肩代わりすることになってしまった。家やクルマ、金目のモノは全部持っていかれたそうです。しかも、役員だった息子も連帯保証人になっていたので、そっちの家も同じように持っていかれたとか。 結局それでも返済できず、仕方なく交通誘導員の仕事を始めたと言っていました」 対照的に、なぜか十分なお金を持っているのに働き続けるシニア交通誘導員もいるというから驚きだ。70代の元銀行員の同僚はそのひとりだという。 「現役時代に良い給料をもらっていたので貯金もたんまりあって、年金も充実しているみたいです。『余生はなにもしなくても余裕で生きている』と笑っていました。でも、奥さんと海外旅行に行くのが大好きで、『その資金づくりのために働いている』と言っていましたよ。 交通誘導員の仕事で月に30万円以上もらっていると言っていたかな。そんなに稼ぐ必要あるのかよと思いますが(笑)、もしかしたら働くのが好きなのかもしれません。あるいは、貯金の額が減るのが耐えられないとかね」
資産十数億を持つお金持ちも…
元タクシー運転手だという80代の同僚もお金には困っていないようだ。 「本人が月18万円の年金がもらえると言っていましたからね。『じゃあなんで働いているの?』と聞いたら、『俺は引退したいけど会社が辞めさせてくれないんだ』って言っていました。実際、その人はすごく仕事ができる。シニアになっても誰かに必要とされるとやっぱり嬉しいんでしょう」 ただ、柏さんが最も驚いたのは、交通誘導員歴20年以上の70代のベテランの話だという。 「どうやって手に入れたのかまでは知らないんですが、一等地にビルを持っているんだそうです。資産額で言ったら間違いなく数十億円でしょう。大したことない人ほど自分のことを大きく見せようとするけど、その人は本当に謙虚でね。 ビルのオーナーなのにどうして交通誘導員なんてやっているんだろうと思わないわけではないけど、やっぱりこの人も働くのが大好きなんだと思います。交通誘導員の配置計画書を作ったり、交通量の多い国道で業務ができたりする資格もきちんと取っていて、リーダーを任されることも多いみたいです。どの仕事に就いても結果を出すんだろうなっていうエネルギーを感じますよね」 一方、柏さんは「できるだけ大変な現場に配置されたくないのであえて資格は取らない」と苦笑する。 「人間なんて、やる気も能力もバラバラじゃないですか。高齢者ならなおさらそうでしょう。でも、交通誘導員の現場にはどんなシニアにも合った仕事がある。ストレスも多いけど、それがこの仕事のいいところかな」 どうやら交通誘導員の世界は懐が深いようだ。 ―――― 【さらに読む】〈工事現場でよく見かける「交通誘導員」はいくら稼げる?78歳の現役シニア誘導員が仰天した「最高月収」〉もあわせてお読みください。
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