「福島の移住支援制度で挑戦できる」県内初・オーダーメイドの靴工房を立ち上げた靴職人
2022年、一時帰省した際に移住者支援制度の存在を知り、Uターンを決意する。この決断は、長年温めてきた想いと、偶然の出会いが重なった結果だった。 「地元に帰ってきたときに、市役所や支援機関を訪ねてみたんです。そこで初めて、移住者向けの支援制度や地域おこし協力隊の存在を知りました。これらの制度があれば思い切って起業にチャレンジできると感じました」。
支援制度を活用した工房の開設
安藤さんは移住支援制度を活用し、2022年に福島県南相馬市小高区にUターン。翌年には地域おこし協力隊として活動しながら、自身の靴工房をスタートさせた。この過程では、行政からの手厚いサポートが大きな助けとなった。 「住宅補助や協力隊の活動報酬などの支援制度を利用しました。空き家バンクを通じて工房兼住居となる物件も見つかって。特に、小高区役所の地域振興課の方々には大変お世話になりました。 靴作りには音も出るので、適切な物件を見つけるのは難しかったのですが、行政の協力のおかげで理想的な場所を確保できました」。
地域おこし協力隊としての活動も、靴作りと地域をつなぐ重要な役割を果たしている。安藤さんは、この活動を通じて地域の人々と交流し、自身の事業を広める機会も得ているのだという。 「月に1回ほど見学者ツアーが組まれて対応したり、イベントで靴づくりの実演や靴磨きのワークショップ等を開催しています。こういった活動を通じて、多くの人に靴作りの魅力を知ってもらえる機会になっています。 協力隊の活動は、自分の事業のPRだけでなく、地域の活性化にも貢献できる制度だと実感していますね」。
オーソドックスな美しさを追求する靴作り
安藤さんの靴作りの特徴は、オーソドックスなデザインを徹底的に追求し、丁寧な仕事の積み重ねを大切にすること。この姿勢は、東京での経験と福島での新たな挑戦から生まれたものだ。 「派手なデザインではなく、古くから愛されてきたデザインを作っています。でも、その中でも人とは違う魅力を出すことはできる。制約があるからこそ、無限の可能性があるんです。 例えば、近年カジュアルに履けるデザインの需要が多いので、つま先のシェイプや靴底に都会的なディティールを加えるなど、現代のスタイルに合わせた提案をしています」。