円安か円高か?株高か株安か? 少数与党で不安定さ増す金融市場 株価と為替のこれからを識者2人が分析
「政治不安を映して株安・円高が一段と進む場合には、その可能性はより高まるだろう。追加利上げは来年1月になることを現時点では標準シナリオとするが、金融市場の不安定化が長期化する場合には、さらに後ずれする可能性もある」 ■与党大敗で円安に! 実際、選挙翌日(28日)のシドニー外国為替市場では円安・ドル高が進み、一時は7月31日以来の水準となる1ドル=153円23銭に達した。この先、日銀の追加利上げが先送りされる公算が大きくなれば、さらなる円安も考えられる。 ただ、為替相場には相手国の情勢も関わってくる。想定以上に米国の景気が堅調なことから、FRB(連邦準備制度理事会)の利下げペースが市場の予想よりも遅くなる可能性もある。為替相場では円売り・ドル買いの材料となりうることで、その動きが顕著になると日銀の金融政策にも影響が及びかねない。 「米国側の要因で円安傾向が強まる場合には、年内の追加利上げの可能性も出てくるのではないか」(木内さん) 年内の追加利上げが現実味を帯びてくると、日米の金利差縮小を材料に、為替相場は円高・ドル安に振れやすくなる。円高は輸入物価の低下につながって国内のインフレを緩和させるものの、もっぱら海外市場で稼いでいる外需系の企業には逆風となる。日銀としては、非常に難しい判断を迫られることになる。 ■意外にも選挙後に株価は上昇 一方、正反対の反応を示したのが株式市場だ。10月28日の日経平均は、始値(取引開始直後の株価)こそ前営業日の終値(取引終了時の株価)を下回ったものの、終値は前営業日比691円61銭高となった。 マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんは、すでに開票結果が判明する前の段階から、「株価の下げは限定的だと思われる」と予想していた。 「理由の一つは、すでに与党の過半数割れの可能性が喧伝され、株価にも織り込み済みであること。加えて、立憲民主党が議席を大幅に伸ばしても野党がまとまっていないので、自民を外した政権交代にはならない」 日経平均の推移を振り返ってみると、石破首相が衆議院解散を正式表明した翌10月2日は下落したものの、それから3営業日は上昇。だが、自民党大敗の可能性が報じられるようになると、始値よりも終値が安くなる弱気の状態が続いた。 その後、10月中旬以降は下落色が鮮明に。こうして与党過半数割れを織り込んでいたうえ、前週末の米ハイテク株の株高や円安進行を好感し、28日の日経平均は大幅高となったと解釈されている。ただ、政局の混乱ぶり次第では、今後の株価動向について楽観視できないと前出の木内さんは捉えている。