「聞こえているのに聞き取れない」子どもたち、聴覚検査は正常な「聞き取り困難症」の実態とは?
LiD/APDの疑いがある場合、まずは耳鼻科を受診
──LiD/APDかもしれないという場合、どこに相談すればいいですか? まずは耳鼻科を受診しましょう。以前に比べ、耳鼻科の臨床医の間でLiP/APDの認知度は上がっており、「聴力検査に問題がないのでLiP/APDかもしれない」と判断できる医者は増えています。私の研究班では「LiD/APDの診断と支援の手引き(2024第一版)」を公表していますが、聴力検査で問題がなくて聞き取りにくさがある場合は、専門医の診察を受けることを勧めています。われわれのサイトで、LiD/APDの診断ができる医療機関一覧もまとめています。 ──LiD/APDやその背景などはどう調べるのですか? 聞き取りにくさの陰に難聴や軽度の難聴が隠れている可能性もあるので、まずは聴力検査を行います。私が勤務する大阪公立大学附属病院では、聴力に問題がない場合、5歳から16歳11カ月の方はWISC検査、16歳以上の方はWAIS検査を受けてもらいます。これらの検査では、聞き取りに関連する「言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度」の処理能力や効率性を測ることができます。個別の項目に高い低いがあっても、全体の評価として「平均」と出ることがあるため、各項目を詳しく見たほうがいいのです。 ──LiD/APDだとわかったら、具体的にどんな対応をするといいですか そのお子さんの特性に合わせた補助機器を使います。補助機器には主に「音を大きく聞こえやすくする機器」と「雑音を防ぐ機器」があります。 前者の「音を大きく聞こえやすくする機器」には、デジタル補聴器や補聴援助システムが挙げられます。補聴援助システムは、話す人の声をワイヤレスマイクで集めて受信機に送るもの。授業で先生にワイヤレスマイクをつけて話してもらい、お子さんは耳に受信機をつけます。何人かで会話するときは、マイクを手に持って相手に向けることで聞き取りやすくなります。 後者の「雑音を防ぐ機器」には、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドホン、音量調整ができるデジタル耳栓があります。 人間はいろいろな方向から音を聞き、頭の中で統合します。しかしLiP/APDの人の中には、左からの音が3割くらいしかわからないという人や、聞くための注意を保持するのが苦手という人もいます。脳のメモリーが10あるとしたら、普通の人が2メモリーで済むところを、LiP/APDの人は6メモリー使って聞き取るような感覚。聞き取るだけでとても疲れますし、聞いたことを覚えたり考えたりするなど、他のことにあまりメモリーを使えないのです。