介護に備えた自宅リフォームは段階的に行うのが鉄則 まずは「最低限の段差解消」「手すり」「照明」の3か所を考えるだけで十分
将来の介護を見据えた自宅のリフォームで「無駄な修繕」をしてしまうケースが絶えない。大阪府在住の60代男性は車いす生活になった父を自宅で介護するため、浴室を改装した。 【表】無駄になりやすいリフォーム5
「自宅の風呂に入りたいという父のために、風呂に電動バスリフトを設置して、自力で起きられない人でも浴槽に浸かれる仕様にしました。しかしいざ導入してみると、体を持ち上げてリフトに乗せる介助が想像以上に大変でした。その後、父は施設に入り、リフォームが無駄になりました」 一級建築士で両親の介護のためにリフォームをした経験がある尾間紫氏が語る。 「要介護者の体の状態や介助者のことを考えず、“とりあえず万全を期しておこう”とリフォームすると無駄になりやすい。リフォームは段階的に行なうことが鉄則です。まずは最低限の段差解消、手すり、照明の3つの改修を考えるだけで十分です」 この3点のリフォームにもポイントがある。 「父の介護時、自宅の廊下や階段の手すりを使わなくなりました。廊下の両側に手が届かず、片側に体を預けると歩きにくいようで歩行器を使うようになったのです。家中に設置すればいいのではなく、玄関の段差を上がるため、風呂で転倒しないため、トイレで便器に座るためといった目的に沿った設置を心掛けましょう」(尾間氏)
照明も設置する場所が重要になる。 「高齢になり白内障などの手術を受けた後に、LEDの明るい光源を眩しいと感じて電気を点けなくなる人もいます。そうすると家が暗くなり、転倒のリスクが高まります。足元をしっかりと照らす人感センサーのライトを設置するといいでしょう」(尾間氏) 段差解消のリフォームは1階を中心に行なうことを意識する。 「高齢になると2階に上がる機会が減りがちです。実際の介護は思ったより進行が早く進みます。入浴サービスなどの介護サービスに加えて、玄関に設置するリフトや歩行器などをレンタルするなど、その都度柔軟に対応することも視野に入れましょう」 リフォームは100点満点を目指さないことが大切だ。 ※週刊ポスト2025年1月3・10日号