<センバツ>回り道恐れるな 啓新の脱サラ植松監督 きょう第3試合で智弁和歌山と対戦
第8日の30日、甲子園初出場で初勝利を挙げた啓新(福井)が、強打を誇る智弁和歌山との2回戦に挑む。創部7年目のチームを率いる植松照智(てるとし)監督(39)は、大学卒業後10年近く野球から離れて会社員生活を送っていた。一度は指導者への思いを断った「脱サラ監督」が、前回準優勝校を相手に采配を振る。 【ダイジェスト動画】注目プレーをもう一度確認 高校時代、植松さんは相洋(神奈川)の三塁手として活躍。主将も務めたが、甲子園には行けなかった。関東学院大で野球を続けながら「高校野球の指導者になりたい」と夢を描いた。教員免許を取得したものの強豪校から声はかからなかった。 2003年春、横浜市の港湾関連の会社に就職。以来、甲子園はオフィスでテレビ観戦するイベントになった。結婚して子どもも生まれ、横浜にマンションを購入した。もう野球に関わることはないと思っていた。 転機が訪れたのは、12年春。啓新に野球部が誕生し、初代監督に高校時代の恩師だった大八木治さん(65)が就任した。植松さんは休日を利用して福井を訪れ、練習を手伝うようになった。「今でも野球を教えたいか」。その年の秋、大八木さんから電話がかかってきた。創部直後で人手が足りなかった。「やらせてください」。植松さんは即答した。 マンションのローンも残っていたが、会社を辞めて家族で福井に移った。翌13年春には啓新の部長に。昨春、体調を理由に監督を退いた大八木さんの後を引き継いだ。 選手には、日ごろから伝えている言葉がある。「回り道したっていいんだ」。諦めない心の強さを持ち続けてほしいと願う。8強進出がかかる強豪との対戦を前に、自身の気持ちも高ぶっている。「監督が楽しんじゃいけないんでしょうけど、ワクワクしてますよ」【塚本恒】