ワタミが「サブウェイ」買収も…マックと肩を並べる国内3000店への道筋は険しい(重道武司)
【経済ニュースの核心】 果たして「ケンタッキー」を追い抜き、「マック」の背中をその視界にとらえることができるのか。居酒屋チェーンと「宅食」を展開するワタミがファストフード事業に本格参入する。 【写真】大手は業績好調も「町焼き肉」を取り巻く厳しい状況…コスト高以外の原因とは? 先月下旬、サンドイッチの世界チェーン、米SUBWAY(サブウェイ)とマスターFC(フランチャイズ)契約を締結。サブウェイ事業の国内運営会社、日本サブウェイ(品川区)の買収にも踏み切った。 日本で「サブウェイ」を独占的に展開できる権利で、期間は10年。日本サブウェイ管轄の国内店舗約180店の運営権もワタミに移る。 ワタミはひとまず向こう1年間にFCと直営合わせて25店舗を新規出店。10年間で店舗網を430店以上にまで広げ、長期的には国内最大級のネットワークを張り巡らせる日本マクドナルドと肩を並べる3000店を目指すという。創業者の渡辺美樹会長兼社長は「『居酒屋のワタミ』から『サブウェイのワタミ』に変えたい」との意気込みを示す。 ワタミは新型コロナウイルス禍が始まった2020年3月期から3期連続最終赤字を計上。23年3月期には黒字転換を果たしたものの、売上高は24年3月期もコロナ禍前の9割程度にとどまるなど居酒屋への客足が戻っていないのが実情だ。 このため居酒屋事業への新規投資を原則凍結する一方、新たな業態開発を探っていた。ただ14店を出店した唐揚げ店はブーム終焉とともに失速。今回、海外有名チェーンのブランドを取り込むことで「再成長を期す」(関係者)。唐揚げ店はサブウェイに転換する方針だ。 だが3000店への道筋は険しい。サブウェイでは火や油を扱わない。このため「大規模な厨房設備や店舗スペースが不要で低コストで出店できるのが強み」(外食業界幹部)だ。 とはいえその分、顧客に提供できるメニューは制約を受ける。人手不足も逆風だ。新規出店しても働き手を確保できなければ運営に支障を来すことになるのは歴然だ。 加えて競合の動きも激しい。 9月に米ファンドの傘下に入った日本KFCホールディングスでは現在約1200店の「ケンタッキーフライドチキン」を1000店上積みする方向で出店候補地の選定を進めているとも取り沙汰されている。 出店競争で大きく後れれを取ることになれば、市場の片隅で埋没してしまうリスクも拭えない。 (重道武司/経済ジャーナリスト)