安田好弘弁護士が会見(全文1)政権批判の対抗措置としての死刑執行を危惧
弁護士の安田好弘氏が17日午後3時から東京の外国特派員協会で記者会見する。 安田氏は、オウム真理教事件、和歌山カレー事件、光市母子殺害事件など死刑判決が出たいくつもの事件で弁護人を務めた。 死刑廃止を訴えており、FORUM 90、アムネスティ、日本弁護士連合会の死刑執行停止法等実行委員会などのメンバー。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは「【中継録画】オウムやカレー事件弁護士、安田好弘氏が外国特派員協会で会見 」に対応しております。
オウム真理教の事件について
安田:ありがとうございます。こんにちは。弁護士をやっています、安田と言います。今日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。オウム真理教の事件について私が体験したこと、あるいは考えていることについて、最初お話をさせていただいて、皆さんからのご質問を受けたいというふうに思っています。 最初のページをご覧いただきたいと思うんですけれども、オウム真理教の事件の年表を簡単に書きました。で、オウム真理教、宗教団体でして、その教祖が麻原彰晃という人なんですね。彼は1955年に生まれていますので、今年で60歳ちょっとということになります。彼はオウム真理教を率いて坂本堤弁護士の殺害事件、あるいは松本サリン事件、あるいは地下鉄サリン事件をやったということで、1995年に逮捕されました。 私は彼の第一審、東京地方裁判所で裁判があったんですけども、そのときの主任弁護人を務めました。で、ここに書いてありますけども、2004年、第一審で死刑判決が出ました。で、東京高等裁判所に控訴をしたのですけれども、彼は当時もう、私が見たところではほとんど理解能力がない状態、弁護人との間にコミュニケーションができない状態だったものですから、控訴審の弁護人は、控訴趣意書というんですか、控訴審で何を主張するかについて、その書面を書くことができないということで、裁判をいったん停止して、彼を治療すべきだというふうに裁判所に主張しました。 裁判所は彼の病気は詐病。つまり偽りの病気だということで、彼の権利を守る必要はないとして、そして彼が期限までに書面を出さないということで裁判を打ち切りました。それに対して控訴審の弁護人が最高裁判所に異議申し立てをしたんですけれども、最高裁判所は高等裁判所の決定を支持しまして、その結果、彼の死刑が確定しました。それが2006年の9月のことでした。高等裁判所で私の同僚の弁護士が弁護をしたのですが、私はそのサポートに回りました。で、私は彼と2006年の9月、死刑が確定する直前に、最後に会いました。 もうそのときには車椅子に乗っていまして、ただ音を発するというのでしょうか。言葉ではなくて音を発するだけの状態で、始終、手を震わせ、体を震わせていました。私はその、突然大きな声を上げたり、机をたたいたり、小さい声でささやいたりして、彼の関心を引こうとしたんですけども、彼は無反応でした。それ以来、私はたまに東京拘置所に出掛けていって、彼との面会を求めているんですけども面会できていません。私の同僚の弁護士は合計400回、会いに行っているんですけども、全て会えていません。担当の職員が言うには彼は反応しないと言うわけです。 しかし私どもは東京拘置所の職員の人と直接会わせるように、彼が生きているかどうかを確認させてくれというふうに要求をしているのですけれども、彼らは麻原彰晃は正常であると言って、私たちの要求をいまだに飲んでいません。今年の1月ですけれども、逃亡していた最後のオウムの逃亡犯といわれている、高橋さんという人ですけども、彼の刑が確定したものですから、今年の3月、先月ですね、彼の、オウム真理教で死刑になっている人たち、13名ですけども、そのうちの7名の人が全国の拘置所に分散留置されました。 日本には死刑があります。そして現に死刑執行が行われています。で、日本国内には7カ所の死刑場があります。刑場と言うんですが、で、7カ所のうち6カ所に13人のオウムの死刑囚の人たちは現在収容されています。 私は先週ですけれども、この中の広島にいる中川死刑囚。それから大阪にいる新實死刑囚と会ってきました。で、私は彼らの再審もやっています。新實死刑囚が私に言いました。13名の死刑囚の人たちがばらばらになることによって、死刑囚の人たちはダメージを受けている。精神的なダメージを受けていると言っていました。 彼が言うには、今まで13人の死刑囚は東京拘置所の中にいた。普段は会うことはできなかったけども、同じ空間にいるということで安心感があったと言っていました。さらに、ところがばらばらになったものですからやはり不安が増してくる。そしてこのように死刑執行のシフトが引かれているものですから、いつ執行されるか分からないということで、精神的に不安な状態になっているというふうに彼は私に話していました。 私はこの人たちに対する死刑執行は、いつ行われてもおかしくない状態になっていると思っています。特にこの間、政権に対する批判が多数なされています。そういうときに、それに対する対抗措置として、この死刑執行が利用されるのではないかというふうに危惧しています。